“The Economist”の電通関連記事。
(2012年7月23日)

カテゴリ:マーケティング
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“The Economist”に電通のイージス買収を取り上げた記事があったので、ちょっと日本語にしてみた。要約すると

  • いい判断だと思うが50億ドルとは、マジぶったまげたな、もう
  • ただ、企業文化の違いを乗り越えるのは結構大変だよん
  • そういえばシュワルツネッガーの「チチンブイブイ」の時は驚いたなあ(←なんで今さら)

ホント、拙い文なので参考までと言うことですが。

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本社ビルを覆うグレーのガラスのように、電通を外から窺い知ることは難しい。アジアでは最大の広告代理店で、2001年の売上総利益は3,300億(42億ドル)を超え、日本の伝統的広告の市場の約30%をおさえている。そして日本のメディアに対して過剰ともいえる影響を及ぼしていると、識者はこぼす。東京の高千穂大学の新津重幸は「日本の情報コントロールに、十二分なパワーを有していることを疑う余地はない」と言う。

 しかしグローバルな舞台において、電通は端役に過ぎない。売り上げの84%を日本市場に依存して、その足元は縮小している。そこで、既にご存知の通り、7月12日に電通はロンドンを基盤にするイージズを傘下に収めた。そして、その価格には思わず瞠目したものだ。そう、シュワルツネッガーが日本のビタミンドリンクのCMにファンシーな服で登場した時と同じくらいの驚きといえる。電通は32億ポンド(50億ドル)を現金で支払う予定であるというが、それは当期純利益の19倍である。

 このニュース以前にも、広告業界では6月にはWPPがデジタルマーケティングファームのAKQAを5.4億ドルで買収し、今月初めにはフランスのピュブリシスがロンドンのBBHを1億ユーロ(1.2億ドル)で傘下に収めるという動きがあった。しかし電通の欧州進出で、そうした動きもすっかりかすんでしまった。

 いろいろな面から見て、この買収はよい選択だろう。イージスは電通の資金力と腕力の恩恵を受ける。一方で、電通はイージズのメディアプランニング/バイイング、とりわけデジタル分野における高い専門能力から利益を得るだろう。日本メディア界の王(top trumpeter)はついに悲願の欧米進出を果たし、日本での利益は58%程になる見込みだ。イージスの役員会はこの件を承認し、最大株主であるバンサン・ボロレはしてやったり。さて、これから何の問題があるのだろう?


 それは、山積みだ。日本における電通の機能は一広告代理店を超えている。彼らが企業のマーケティング活動を御すようなこともよくあることだ。そのスケールゆえの隠然たる影響力を持ち、我が物顔で振る舞い、それが評価を呼んできた。

 そしてより気がかりなのは電通の企業文化だ。多くの日本企業と同様に、そして自由闊達な欧州の広告代理店とは正反対に、堅苦しく杓子定規で、実力よりも年功を重視した報酬体系である。日本においてさえクリエイティブスタッフをつなぎとめることに苦労している、とある社員は言う。そうした序列との摩擦を恐れない「希望の星」は、しばし独立を試みるのだ。

 振り返ると、電通の異文化連携が輝いたことは殆どない。ピュブリシスと十年にわたって試みた提携も尻すぼみだった。電通はピュブリシスを欧州への橋頭堡とすることはできなかったのだ。この2月に両社は提携を解消し、ピュブリシスは6億4400万ユーロ(8億5200万ドル)で株式を買い戻した。

 異文化間の連携は、常に困難を伴う。とりわけ創造力や個人の才能に依拠する産業ではなおさらだ。松下電器(現パナソニック)は1990年にハリウッドのユニバーサル/MCAを買収して火傷を負った。野村証券は金融危機後のリーマン・ブラザーズを傘下に収めたが従業員をつなぎとめることに四苦八苦している。

 イージスのCEOであるジェリー・ブルマンは、買収後も「連続性」が約束されるという。イージスのスタッフとの契約は維持され、クライアントへのサービスも継続され、本社はロンドンのままだ。ブルマンはその職にとどまる。それは電通がイージズの独自性を認め続けることを示唆している。あてにしない方がいいとは思うが。