タレント広告とブランディング、という件。
(2012年10月12日)

カテゴリ:マーケティング,広告など
タグ:

199-awa.PNG 結構前のことだが、facebookのとある知り合いのウォールで議論になったのだけど、「タレント広告って、正しい戦略なの?」という話があって、僕も茶々を入れたんだけど、いい機会なので一応整理しておこうと思う。 まず「ブランディング」という観点から考えた時に、タレント広告を積極的に推奨する研究者は知っている範囲では「いない」という感じがする。 理由は単純だ。ブランド連想の中核は、名前、ロゴやマーク、そして製品やサービスから受ける印象であるべきで、だからこそ「ブランド」として永続性を持つからである。 それなのに、ブランド連想の中核をタレントという外部資源に預けるというのは、あまりにリスクが高いからだ。ちなみに中核を預けるつもりでなくても、一度広告に起用すると連想の上位、それも多くの場合1位がタレント名になるのである。 スキャンダルなど問題外だが、そうでなくてもタレントの価値はブランドと無関係に上下する。俳優だってずっと人気を保つ人は稀だし、スポーツ選手なら当然成績も変わる。 しかし、こと短期的なセールスに関していうともちろん効果はある。 図は、CMの出稿量と認知率を示したモデルだ。大雑把なんだけど、CMを出稿するほど認知は上がる。これを定期的に調べてデータ化すると「このくらい出稿すればこのくらいの認知」というのは調査会社や広告会社には蓄積されているし、実績のある大手広告主も知っている。 そして図の★のように、「出稿量の割に認知が高い」CMがありがたいわけなんだけれど、この手のモノを分析すると、その多くがタレント広告なのだ。しかも人気タレントほど、認知を取るには手っ取り早い。 とあるメーカーの宣伝部長がこの手のデータを見せて、「タレントは拡声器」と言っていたが、たしかにそうなのだ。何千万という契約金がかかることもあるが、媒体費用はその一桁高い。したがって、十分に効率的とも言えるのである。 意味もなく大金をつぎ込んでいるわけではない。 そして、インターネットを含めた情報爆発の時代こそ、結局認知を取ることは大変になる。そこで、タレントに頼ることになってしまう。マス広告の比重が低まってきたことはたしかだが、その一方で典型的なマス広告の象徴であるタレント起用は減らない。 これって、どうなんだろ? 自分自身も「ブランディングにタレントは馴染まない」とずっと思ってきた。ただし、そう簡単に否定もできないんだろうな、というのが最近の感覚だ。まずはタレントを起用して、認知獲得という「離陸コスト」を使う。その後「水平飛行/巡航速度」に入っていく段階で、徐々にタレント離れをしていく、というストーリーもあるのだろう。 実際にソフトバンクはモバイルのスタート時にキャメロン・ディアスやブラッド・ピットを起用していただが、その後は基本的に「お父さん」頼みだ。そして、時にインパクトのあるタレントを使う。またユニクロも、メリハリをつけてタレントを使っていると思う。最初からのストーリーではないかもしれないけれど、計算は感じる。 まあたしかに「安易だなあ」と思うタレント広告はあるけれど、「ブランディング≠タレント広告」という教条も、見直した方がいいように思ってる。