再考/コピーライターの仕事。
(2014年6月12日)

カテゴリ:キャリアのことも,広告など

とある広告会社のクリエイターが、新人を預かるという話になって、一体何から教えようかというので、まあいろいろ話して「コピーから入ったら」ということで一致した。

まずは、キャッチコピーをたくさん書いてみる、というわけだ。

コピーライターの仕事って、大変に学びが多い。コピーを書くというのは、コピーライター以外の人でも、トレーニングとして有効だと思う。

コピーライターの仕事は、結構誤解されている面もあるかもしれないけれど、最大のメリットは「戦略と戦術を、両方考えられる」ことだと思う。

というか、最近つくづくそう思うようになった。

コピーで、まず考えることは「切り口」だ。つまり、「戦略=どこで戦うか」ということ。

この場合、商品に決定的なUSPがあれば、それを伝えるだけで足りる。「スプーン一杯で驚きの白さ」とか、携帯電話の「0円」とか。こうした切り口は、企業の戦略に寄り添っていく。スマホもいろいろ出てきたから「大画面でいくか」となれば、コピーも基本的には「画面の大きさ」が基本線だろう。

ところが、製品の差別化が困難になってくると、同じフィールドの中で「戦術=どう戦うか」ということになっていく。そうなると、コピーとしては“表現”が求められる。語尾や、言いまわし、あるいは会話にする…などいろいろ工夫する中で、買い手が「自分に近い」と感じるような言葉を考えていくわけだ。

こう書けば何となくお分かりかと思うが、戦略レベルで決定的に差別化できれば、コピーの役割は背景へと去っていく。相当シンプルになるはずだ。

ところが、そうした仕事は大変に少ない。どうにかして、「アタマ一つ抜け出したい」ような状況だと、表現で差別化する必要が出てくるわけだ。

最近、コピーの潮流を「ポエム化」と評する向きもあるようだけれど、そもそも戦術レベルでしか差別化できない状況では、多かれ少なかれ「言葉が引っ張る」状況が求められる。だから、そういった揶揄はあっても、気にする必要はないんじゃないかな。

で、こうしたキャッチコピーを「100本書け」というようなトレーニングを、非合理的と思う人もいるようだが、それもまた誤解かと思う。

コンサル的発想なら、最初に環境分析して「鉱脈を見つける」ということになる。ただ、コピーのトレーニングは「合理的な遠回り」という面もある。僕は、そのことを「自分の星座を作る」と言っている。

満天の星を見せて、自由に星座を作らせていくのがコピーのトレーニング。その結果「できました」というのに、「何だよ、それ射手座だよ」とか、「それでパンダ座に見えるか?」と、叱られながら毎日星を眺めては線を引くようなものだ。
非合理のようだが、星の配置を知るのには実はこれが意外と手っ取り早い。しかも、その後、星の動きを調整できれば相当長く使える。つまり、気がつくと合理的な戦略パターンをアタマの中に整理できるはずだ。

新人で山ほどコピー書いてる皆さん、頑張ってね。