新入社員も社長も、まず「1つのこと」から。
(2015年4月1日)

カテゴリ:キャリアのことも

4月になった。会社を離れて久しいけど、知っている学生が社会人になったりもするし、少しは気になる。以前は新入社員研修もやったし、その辺りの経験を本にも書いた。

いまでも、いろいろな会社で話を聞くけれど、新入社員を迎えた会社にとって「教えてもできない」ということで悩むところは意外と少ない。日本には、新卒一括採用の伝統があって「ゼロからできるようにする」ノウハウは相当に蓄積されている。

一方で、新入社員が「こんなことしかさせてもらえない」という不満を持つことは結構多い。「意欲的な学生を採用できた」、と思っている会社ほどそういう傾向が強いようだ。
意欲的である、ということはいろいろなことに関心を持ち、世の中の流れに敏感だ。同世代の中で、自分がどのくらいのポジションにいるのか?を考える。

会社が「1.2.3…」と順番に教育していくことが、とても遠回りに思えるようだ。ある程度しっかりした組織に入れば、それは当たり前なんだけど、なんかビジネスはもっとスピーディでズンズン進むものだと思っているらしい。

まあ、起業ストーリーとか、新規ビジネスとか、そういうお話が多いからね。

でも、仕事はまず「1つのこと」に集中しないといけない。それは、新入社員も社長も実は同じだと思う。

ドラッカーの「経営者の条件」という本がある。読みやすいし、書かれていることは本当に的確だと思うのだけれど、読んだ人が結構引っかかるところが1つある。それは「もっとも重要なことに集中せよ」という章だ。
『成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない』

実際には複数の仕事を並行して進めることもあるし、ドラッカーもそれを承知の上で説明をしている。途中で「モーツアルトは例外」という話も出てきて面白いんだけど、ここで書かれていることは、やっぱり真実だと思うようになった。
ここで書いてあることを僕なり言いかえるとこんな感じになる。
「1つのことができない人は、2つ目のこともできない」

「1.2.3…」を一気に「1→9」で達成してるように見える企業があったとすれば、それはスピードが速くて緻密だから。間がすっ飛んでいたら、どこかで崩壊するし、失敗したケースはほとんどがそれだったりするのだ。

新入社員がコピー取りして、会議室手配して、コンタクト・レポート書いてというプロセスをは、たしかに単調かもしれない。でも、社長になっても、毎日やっていることは「1つのこと」への集中で、そのプロセスは単調だ。一見派手に見えるようなこと、たとえば巨大なM&Aの決断だって、おそろしく長いデータ収集の積み重ねの上に成り立っているわけで、それが1つできて「1→2」となることには変わらない。
つまり、すべての人にとって、当たり前だけど気づかれにくい原則なんだと思う。

実は入社面接で「何をしてきたか」を執拗に聞くのも原理は同じ。学生時代に「1つのこと」を何かできていれば「次もできるだろう」という経験則があるから。
というわけで、まずは1つのことをきちんとやる、ってどんな仕事でもポジションでもとても重要なんじゃないかな。