【本の話】木を見る西洋人 森を見る東洋人
(2016年2月21日)

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eastwest【本の話】リチャード・E・ニスベット著 村本由紀子(訳)『木を見る西洋人 森を見る東洋人』 ダイヤモンド社

 

この図を見ていただきたい。この3つの対象物のうち、下にあるものはAとBどちらの仲間だと思うだろうか?つまり3つの対象物のうち2つを一緒にするなら、どれとどれをまとめるだろうか?

これは本書の中で紹介される実験の1つである。そして、その結果は西洋人と東洋人で異なる結果を示すというのだ。

西洋人は、「牛と鶏」を1つにする。一方で東洋人は「牛と草」をまとめようとする。「動物」という分類上の観点で見るのが西洋人だが、東洋人は「牛は草を食べる」と考えるというのだ。

こうした事例を紹介しつつ、西洋人は「名詞で世界を捉える」のに対して、東洋人は「動詞で世界を捉える」というのだ。他にも似たような事例が紹介される。

本書は、西洋人と東洋人の心や思考のあり方を比較検討した本だ。こうした比較はよく行われている。タイトルにあるような世界観にしても、西洋医学と漢方の違いのようにして何となく認識しているのではないだろうか。また、スターウォーズにしても東洋的な神秘性を取り入れることで、独特の世界観を築いている。

本書では、古代ギリシャと中国の比較などから始まり、それぞれの自己のあり方の差異についても論じる。この辺りまでは一頃の日本人論、などにも近いものがあり少々既視感があるかもしれない。

ただし、本書は認知心理学の観点から行われたさまざまな実験をとおして、ユニークな知見を次々に見せてくれる。

先の図の比較もそうだが、発想は結構素朴だ。日本からの留学生が、みんなでアメフトの試合を観に行った時のこと。興奮した仲間が立ちっ放しで、よく見えなかったことに憤慨してこう考える。

「アジア人は世界を広角レンズで見ているが、アメリカ人はトンネルのような視野しか持っていない」

そこで実験をおこなう。水槽を泳ぐ魚のアニメーションをつくる。そこには、一匹または複数の「中心的な」魚がいて、大きく明るい色で速い。その他にも魚がいて、水草や石や泡が描かれている。それを米国人と日本人に見せた。

そして見た後に、その内容を説明してもらうと、中心的な魚についての回答は同じだったが、背景的要素については日本人の回答数が6割以上も多かったという。

こうした実験を積み重ねて、西洋人と東洋人が「認知している世界」の違いに迫っていく。それは言語が理由なのか、あるいは心的イメージの差が異なる言語を生んだのか?ということについても言及がされる。

それは、まだ“中間報告”とされるものかもしれないが、興味は尽きない。

ただし、この著者は米国人であり、東洋人の実験対象者も中国・日本・韓国が主だ。中東やアフリカ、あるいはインドだとどうなのか?そうした疑問はあるが、今後もさまざまな研究が広がるだろう。コミュニケーションやメディアの仕事をしている人にとっては、一読しておく価値はあると思う。