向かい合う若冲~春のミホミュージアム
(2016年3月7日)

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miho国内の美術館の多くは都市部にあるが、郊外や山麓などにもユニークなものが結構多い。

関東圏だと箱根や信州などの観光地に有名なものがあるが、その他にも千葉県の川村記念美術館や群馬の大川美術館など、「そのために」行くような立地の施設もある。

今回行ったのは信楽のMIHO MUSEUM(ミホミュージアム)だ。「信楽」というのも関東在住の者にはなかなかピンと来ない。狸で有名な信楽焼の町らしいとわかるが、アクセスを調べると石山駅から送迎バスで50分というが、石山駅というのもよくわからない。

結局、京都からレンタカーを借りて向かうことにした。1時間くらいで行けそうなのだ。そうなったら京都へも行こうかということで金曜の朝に出立して、その日はミホミュージアムへ行き、京都に戻って日曜夕まで滞在しようという計画にした。

ミホミュージアムは前々から関心があった。コレクションに定評があるし、建造物としてもユニークだという。今回は伊藤若冲の「樹花鳥獣図」が静岡県立美術館よりやって来て、プライスコレクションの「鳥獣花木図」と一緒に展示される。

後者の方は、2006年の東京や2013年の福島でも見たが、前者の方は静岡へ行こうかと思いつつタイミングを逸していた。

だったら、これを機会にミホミュージアムへ行こうという話になった。これは3/1スタートの春季特別展「かざり――信仰と祭りのエネルギー」の中の展示なのだが、静岡からの引っ越しは13日までなのだ。

前半は仏教伝来のなかの「かざり」にまつわるさまざまな美術品、仏像や曼荼羅図、さらに建築の一部などを中心としており、この若冲作品群を転回点として、後半は江戸時代の屏風図絵や地元滋賀の曳山祭など、より世俗的な祭事の空気感を味わうような構成になっている。

京都に旅をするなら、この企画展と組み合わせるというのは、なかなかに面白いのではないか。涅槃図や曼荼羅あるいは洛中洛外図など、京都で見る建造物や美術の空間美がここに凝縮されている。

その後に京の町でその空気感を体現できる。この美術館が水先案内になるわけだ。

ちなみに、「鳥獣花木図」は若冲の作ではないという説もある。この辺りは、論争対象ということで僕は言及しないが、それとは関係なくも、この二作品を向かい合わせで見られるというのは相当貴重で、19年ぶりらしい。

改めて感じたのは、「鳥獣花木図」が“稚拙”と指摘されることについては、やや違和感があるということかな。「別の領域」に入ったという感じ方もあるように思う。また、これが工房の作品であると言い出すと、また話はややこしいし、モーツァルトの「レクイエム」のような例もある。

この辺り、気持ちに“スーッ”と入ってくるかは人それぞれだし、それを確かめるいい機会じゃないだろうか。(左:「鳥獣花木図」右:「樹花鳥獣図」)jakuchu