2016年05月アーカイブ

718ZlaU0XrL深緑野分 『戦場のコックたち』 早川書房
最近、日本のミステリーの新作を読むと、なんかスッキリしないことが多かった。

先日書いた「王とサーカス」とか「64」とか、まあ世間の評判と自分の好みがズレているんだろうけど、この「戦場のコックたち」には結構引き込まれた。

ミステリーとしていろいろ突っ込むとキリがないかもしれないが、「次作も読んでみたい」と感じがする。デビューの短篇集に続いて、これは初の長篇となる。

ただし、いわゆる「連作」というスタイルだ。プロローグとエピローグを挟んで5つのエピソードが語られる。ただ、登場人物は同一という体裁だ。

というように書くと、北山薫のシリーズを思い起こすかもしれないが、タイトルとおり舞台は戦場だ。人は次々と天に召される。

この小説が意欲的だな、と思うのは、まず舞台の設定だ。第二次世界大戦の末期、あのノルマンディー上陸作戦に参加した米軍の群像を描いている。主人公はいわゆる「特技兵」で、タイトルの通りコックだ。 >> ジンワリ響く群像劇のミステリー『戦場のコックたち』の続きを読む