僕が「幻想振動症候群」だった頃。
(2016年5月18日)

カテゴリ:キャリアのことも

最近、キャリアに関する話をすることが多く、自分が会社を辞めた頃のことも思いかえす。そして、しばらくの間は、しょっちゅう胸の辺りがブルブルしていたなあということを思い出した。

というか、正確には「ブルブルしているようだけど、実はそうでもなかった」というわけで、それは「幻想振動症候群」ということを後に知った。英語だとphantom vibration syndromeというわけで世界中で見られる現象なのだろう。

しかし、なんとファントム!なんか「オペラ座の怪人」が出てきて、いろんなモノをブルブル震わせているようだ。それじゃ、ポルターガイストか。

つまり、携帯電話が震えてもいないのに、そう感じるということだ。あるいは「空耳」みたいなものかもしれない。じゃあ、なんでそんな状況だったのかといえば、やはり日々緊張していたからだろう。

会社を辞めた頃からしばらくは、メールを携帯に転送していた。だから、どこでも受けて、とりあえず返信する。「ただ今移動中ですので、のちほど折り返し返信します」とかを定型文に入れていた。

パソコンも持ち歩いていたから、とにかくすぐに返信した。1人で仕事をするのだから、この辺りは相当気を使っていた。旅行に行く時もずっとパソコンを持っていて、初めてパソコンなしで旅をしたのは、辞めてから3年経った頃の北海道旅行だった。

電話やメールをとり逃さないようにと、いろいろ考えた末、ワイシャツの胸ポケットに入れるようにした。もちろん、服装によっては胸ポケットがないので、そういう時はさらに気を使う。

別に電話やメールを逃したら失注するような仕事ではない。ただ、それだけ神経を尖らしていたのだろう。症候群の理由はストレスだというのも、まあ納得できる。

最近は携帯への転送を止めた。ipad miniでメールを見るが、心理的には慌ただしさが薄れてきたのだと思う。

ただし、「携帯が震えてるんじゃないか」という「幻想の時代」は、別に苦しい時代ではなかった。会社を辞めて1人で働くんだから、そのくらいの神経の使い方は当たり前だと思っていたのだろう。

むしろ、仕事を依頼されたりした時の電話やメールがいつ来たか、などをよく覚えている。

雨の日の門前仲町の改札を出た時に来たメール、とか青学の相模原キャンパスに向かう途中のクルマで鳴った電話とか、不思議にクッキリと思い出せるのだ。

会社員の時には気づかなかったけれど、一通のメールや電話が後々までの収益にきっかけになることもある。それがわかってくると、「メールの価値」が俄然違って見えてきた。この辺りは、会社員の時はまったくわからなかった。

もっとも、ストレス耐性は人によって異なる。「振動幻想症候群」が、「まあ、またか」と思うくらいじゃないと、1人仕事は難しいのかもしれないけどね。