栄える愛知と、微妙な名古屋。
(2016年9月30日)

カテゴリ:マーケティング

ふと思ったんだけど、そのうち名古屋は「やたらとファミマの多い街」になるのだろう。他所から訪れたものは単純にそう思うはずだ。それは「やたらと三菱UFJ銀行が多い街」と似たようなものかもしれない。

そもそも「東海銀行」が統合されてUFJになったのが2002年。若い人は、存在すら知らない。

また、サークルKサンクスがファミリーマートになって、メディアの関心は「コンビニ3強」という捉え方だけど、名古屋的にいえば「ユニーグループ」の解体・統合という感じだろう。

考えてみると、名古屋の第三次産業は結構きつい。

僕が、名古屋に転勤したのは1990年だが「五摂家」という言葉が一般的だった。御三家、四天王とは聞くが、五摂家という言葉自体が古めかしい。

松坂屋・名鉄・東海銀行・中部電力・東邦ガスのことを指した。

アレ?と思ったのは、メーカーがないことだ。当時からトヨタは当然の大企業だが、あの会社は「名古屋」ではないということなのだろう。その後も、愛知全体として工業生産はダントツで、三大工業地帯のトップで。失業率も低い。

ただし、それは「愛知」であって、東の三河エリアが支えている。名古屋は尾張エリアで、プライドはあるものの実質は三河に支えられている感じだ。このあたりは微妙な葛藤があって、先のアジア大会の立候補でもひと悶着あった。

先の五摂家にしても、東海銀行は消えたし、松坂屋も統合後は大丸主導だ。名駅の店舗はなくなり、銀座も業態を変える。

名鉄は本気出したJR東海におされて、不採算路線を廃線にして、かつての国鉄のようだ。

というわけで、名古屋の第三次産業はユニーも含めて立ち行かなくなった。ついでに言うと、中日ドラゴンズも大変そうだ。

それで名古屋城の天守閣を木造にするとかいうのだから、よくわからない。

名古屋は大都市だけれど閉じていた。彼らは、三河を「田舎」呼ばわりしていたが、トヨタグループなどの企業は、名古屋を見ずに世界を見ていた。それが、この差になったのだと思う。

もう30年くらい前のことだが、トヨタグループ企業の子会社の製品で英文パンフレットを依頼されたことがある。マッキントッシュの周辺機器で、デザインしたものをそのまま刺繍できる小さなミシンのような製品だ。

日本語で考えて、英文にしたのだが担当は若い女性だった。米国の展示会の様子を見せてもらうと、相当達者な英語を話す。話をしていると高校卒で入社したということだったが、もう完全にグローバルに仕事をこなしている。

「もう、このエリアは世界と直接つながってるんだ」とその時に実感した。

ただし愛知が自動車関連産業への依存が強すぎるのも、ちょっと危ない。一方で「名古屋」で元気なのは、台湾ラーメンやあんかけスパだったりするけれど、大手の企業は統合の波にのまれている。

外から見るとわかりにくいが、愛知と名古屋は微妙なバランスで成り立っているのだと思う。

【追記】最近どこかの週刊誌は名古屋をけなす特集をしたらしいけど、あれは部数の落ちた雑誌が、元々売れない名古屋エリアにけしかけたゲリラ戦のようなものだろう。また観光人気のランクが低いというが、あまり気にしている人はいないんじゃないかと思う。