「渋谷発電所」って、どこにあったんだ?
(2016年10月9日)

カテゴリ:世の中いろいろ,読んでみた
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shibuya東京の街を歩いて、「昔はここに」という話になったら、十分に年寄りだと思うけれど、僕は20代の頃から結構好きで古地図の本などを買っていた。

ただ、時折「エ?」と思うことはもちろんあるわけで、先日『落陽』という朝井まかでの小説を読んでいたら、意外な文章に出くわした。

この本は明治神宮造営までのプロセスを追ったフィクションだが、関わった帝大の博士などは実名で登場する。当時の東京の描写もとても生き生きしていて引き込まれた。

そして、主人公たちが神宮の造営予定地に立つ場面があって、そこから見た風景が描かれる。

「淀橋の浄水場」はわかる。いまの新宿西口の高層ビルのあたりだ。「瓦斯蔵」つまりガスタンクも見当がつく。いまのパークハイアットだろう。あの敷地にはいまでも東京ガスの施設がある。

けれども分からなかったのが「渋谷発電所」だ。まず思いついたのが「電力館」なのだが、あそこは元々区役所があったところらしい。そして、検索してみると東京都交通局のウェブサイトに行き当たった。交通局はいまでも多摩川で発電するなど電気事業もしていることを初めて知る。

そして、「電気事業の歴史」というページの冒頭にはこうあった。

『東京市電気局(交通局の前身)発足。東京鉄道株式会社から引き継いだ3か所の火力発電所(品川、深川及び渋谷)の運営を開始する。』明治44年8月1日のことだ。

品川・深川・渋谷。この3つの知名の共通点がすぐにわかるのは、東京暮らしも相当長い人だろう。

3つとも、バスの車庫があるはずだ。

そして、ipadに入れてある「東京時層地図」というアプリで調べたのが上の写真だ。どうやら、都営バスの渋谷車庫のあたり発電所のマークがあり、ここにはいまでも変電所がある。山手線を恵比寿の方に走って、すぐ左側あたりだ。

ちなみに、深川と品川の車庫の場所に発電所は確認できなかった。

というわけなんだけど、「渋谷発電所」って響きがいいなあ。おそらく、当時の市電に電気を供給していたのだろう。

あと、この小説に出てくる「三十間堀川」の場所も調べてみると面白い。

そういえば戦前の軍事遺跡や、GHQに接収された時代の本もあるけど、こういうのもまた意外な歴史を教えてくれる。変わらない古都もいいが、変わる首都にはまた別の魅力があるんだなあと、つくづく。