「確率思考の戦略論」とUSJの呪い人形。
(2016年10月20日)

カテゴリ:マーケティング
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index既に評価の高い本だと思うけれど、なぜ思い出したかというとUSJがハロウィン企画でおこなった「ジャパニーズ・ホラーナイト」が騒ぎになっていることを知ったからだ。

たくさんの日本人形を集めて恐怖を煽ることに「日本人形協会」が抗議したということで、ニュースになった。

ただこの騒動は、USJ vs. 人形業界という単純な感じでもない。そもそも展示に使われた人形は和歌山の淡嶋神社から貸し出されたものなのだ。だから人形協会の抗議書も、USJとこの神社に送られている。

淡嶋神社は、人形供養で有名なところで、拝殿には人形がこれでもかというほど並べられているし、「心霊スポット」としても有名なところだという。で、この神社だけどウェブサイトを見るとこんなQ&Aまである。

「髪の毛が伸びる人形があるとテレビ等で見ましたが、本当にあるのですか?  又、なぜ伸びるのですか?」という問いなんだけど、「本当にあります。人形は見てもらったり遊んでもらったりするために、生まれてきたものです。そのため、人に注目を集める為に何らかの奇怪的な事をおこすことがあります」ということらしい。

いやあ、USJ以上にしたたかなのは、実はこの神社なのではないだろうか。

で、調べていて気づいたんだが「淡島神社」という「シマ」の字が違う神社が福岡にあるようだが、こちらのサイトはメンテナンス中になっている。

理由はわからないが「当宮では人形の貸出等は行っておりません」と書いてあり、「ご賢察の程~」というくだりを読むと何かが飛び火したのかもしれない。大変だなあ。

なんか本のことについて書くよりも、神社の話になってしまったが、これはマーケティングの本としては久しぶりに迷わず買った一冊だ。

タイトルの通りで「数学マーケティング」であり、結構な数式も出てくるが、そこがわからなくても大事なことがわかるように書かれている。P&GからUSJに転じて今の隆盛を演出した森岡氏と、彼を支えるアナリストの今西氏による共著だが、時にはマーケターとアナリストの視点の違いも描かれる。

プレファレンス(好意)の重要度が視点を変えて何度も述べられることで、戦略の本質がわかるし、組織や人材について言及しているところも納得がいく。

日本のマーケティングにとって一番の壁も見えてくる。それは、こうした発想に目を向けないか、あるいは「じゃあやって」と任せてしまう経営姿勢にあるんじゃないだろうか。

なお、この日本人形についてUSJは「このままやります」ということらしい。そりゃ、そうだろう。すべてを計算しての企画のはずだから。

とはいえ、もし今の時期に自分がUSJに行くことになったら、このホラーに足を踏み入れるだろうか。いや、そもそもUSJに近寄らないと思う。

神社の言ってることを信じるわけではないけど、とはいえあれだけの数を結界の外に出したら、何かあるんじゃないか。
まさか人形の呪いが、確率思考を粉砕することはないと思うが、妙に気になるのである。