いいグラスとスピーカーのせいで、バーに行かなくなった。
(2017年3月15日)

カテゴリ:マーケティング

ひと口に「酒好き」と言っても、飲み方は人それぞれだ。外では相当飲むのに、自宅ではほとんど飲まないという人もいる。また、一人でバーや酒場には行かないというタイプもいる。

僕は家でも飲むし、外で一人飲みもする。ただし、大人数の会合にはあまり行かないし、行っても酒は飲まないことも多い。立食パーティなど、懇親が目的で好きな酒を選べないなら烏龍茶で十分だ。

最寄駅から自宅まではさほど遠くないのに、やたらと落とし穴が多くて、一人で店に入ったりすることも多いのだけれど、最近その機会が減った。理由は単純で「ちょっといいグラス」を買ったからだ。

もともと氷だけで飲むことが多く、オールドファッションドのいわゆる「ロックグラス」は幾つか好きなのを持っていたのだが、ソーダ割りなどを飲むときは適当なもので間に合わせていた。で、少し前にちょっといいグラスを買ったのだけれど、この重みがちょうどいい。それほど高くないウィスキーをソーダで割っても、なんか「いい感じ」なのだ。

で、どうなったかというと駅から直帰することが増えた。着替えて、好きな酒をゆっくり飲む。

こんな計算をするのは野暮だとは思うけれど、ちょっといいグラスとはいえ、何回かバーに行かなければ、「元がとれる」ようなものだ。

そして、気づく。「ああ、こうやって外飲みは減っていくんだな」と。

家の中の調度をちょっと変えてみると、見事に部屋に居ついてしまうことを、一昨年にスピーカーを買った時にも感じた。本を読む時に近くのカフェに行くことが多かったのだが、スピーカーをきっかけに激減した。

幸い近所ではおいしいコーヒー豆や日本茶を入手できるの。好きな音楽を聴けるなら、まあ家でもいいだろう。

そして、外食産業は相変わらず「好調」とはいいがたい。もちろん個々の店や業態によっても差はあるし、過当競争が大きな原因だろうけれど、「自宅という競合」、つまり「帰宅引力」が着々と力をつけているのだ。

タワーマンションの並ぶ街を歩いていると、飲食店は少ない。ただ、そういうところのコンビニでは高価格帯のビールがよく売れると聞いた。そりゃ、そうだろう。それなりのカネを出して手に入れた空間だ。自宅ほどの景色のいい飲食店はなかなかないだろうし、外飲みをやめて、ローンの返済をした方が合理的だ。

別に広い部屋や景色、あるいはスピーカーやグラスが帰宅引力を強めるわけではない。猫を飼えばその引力は相当強化されるし、金魚でも何かの効果はあるだろう。

そういえば、以前欧州の街に行って、あちらこちらが外国人観光客ばかりの光景を思い出す。地元の人はどこに行くのか、と聞くと「大概は家で簡単に済ませる」と言う。いわゆる「美食の街」ほどそういうもののようで、いまの東京はそんな姿に近づいているのかもしれない。

というわけで、飲み代を減らしたいならいいグラスは効果があるかもしれない。ただ、スピーカーは収拾がつかなくなるかもしれないので、お勧めしないけど。