観世能楽堂の開場、祝賀能へ。
(2017年4月21日)

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観世能楽堂が、開場した。銀座にできた「GINZA SIX」の地下となる。21日に行われた、開場記念の祝賀能に行ってきた。

正式名称は、「二十五世観世左近記念観世能楽堂」であり、銀座の地へは江戸時代以来の「帰還」ということになる。

祝賀能ということで、「翁」に始めり、休憩を挟んで、仕舞から「鶴亀」、さらに仕舞と続き「高砂」となる。

祝賀能ということもあり、個別の評などを書くのは野暮だとは思うが、「翁」の三番叟をつとめた野村万作には息を呑んだ。鑑賞するというより、舞う姿を呆然と眺めているだけで時間が経っていく。

いったん休止して面をつけるまでの間に、静かな会場に荒い息遣いが聞こえて、控える萬斎の表情が心なしか硬くなったようにも感じたが、見事に演じられていた。

いずれにしても、またのない機会だったが、こうした舞台についてはやはり言を要するものではないのだろう。

というわけで、能楽堂自体の感想などを簡単に。

まず、ホールの立地は銀座通りの面した建物の地下3階だ。通りとは反対に海側の方からだと、エスカレーターでスッと入っていける。もちろん上階の施設とも連絡できるが、この日のように混雑していても静かに訪れることができる。

客席は、正面に向かって長い。正面席が16列あるが、脇正面は4列に小さく2列が後ろにあるくらい。中正面は正面の左に沿うようにして伸びる。

多くの能楽堂が舞台を中心にして、「扇」のような形になっているのに対して、舞台から奥に長方形のようになっている。イメージとしては「シューボックス」のコンサートホールに近い感じだ。

正面席は緩やかな傾斜と、互い違いの配列で舞台は見やすい。さらに前後のピッチにも余裕がある。

舞台はもちろんだが、客席の椅子も木のフレームで作られており、クリアな音の響きになっている。国立能楽堂の音のこもった感じは、あの布で包まれた椅子も一因だとおもうが、そのあたりはもちろん配慮されている。

ただし、国立のように固定された字幕表示はない。ここらあたりは議論になるところのようだが、外国人向けの補助手段は用意されるだろうし、日本人でもビギナー向けの設備は考慮されてもいいだろう。

もっとも、しばらくの祝賀能では不要だろうが。

ロビーでは、スヌーピーとタイアップしたグッズが人気だったが、全体としては少々窮屈な感じだ。このあたりは、複合施設の限界だと思う。

なお、施設の案内には「能楽堂」の後に、わざわざ「多目的ホール」と記されている。6月には立川志の輔が落語をおこなうようだが、その辺りの企画もそのうち話題になってくるだろう。

というわけで、とりあえずはめでたい祝賀能、そして日賀数能と続く。春にふさわしい、晴れやかな開場だった。