外食と酒の「デカップリング」が、ますます進む。
(2017年6月20日)

カテゴリ:マーケティング

飲食店の人と話をすると、大概は「ぜんぜん良くないですよ」というニュアンスになる。

これは、彼らなりの渡世術というところもあって「いやぁ、予約断るのに一苦労です」と言っていたら可愛げがないだろう。せいぜい「貧乏暇なしで」というのが、ご挨拶となる。

とはいえ、飲食店の様子は身近な景気の物差しになる。

会社員の頃に、ランチタイムに立ち食いそば屋の行列をチェックしていたけど、見事なほどに不景気に比例して列が伸びていた。

金融危機の後に、外国人の多かったレストランは恐ろしいほど空いていたことも思い出す。

しかし、最近の様子はどこか違う。同じ外食産業でも業態によって、かなり違っているようで、飲酒を前提にしているところは厳しくなる一方のようだ。

日本フードサービス協会の統計を見てみると、「パブレストラン・居酒屋」業態が相当にきついようで、データをグラフ化してみた。今年4月のデータが最新で、過去2年を見てみよう。

まず、緑の破線が加盟している事業者の売上合計だ。ここ2年で基本的には対前年比でプラスに推移している。そして、あとの4つが居酒屋の動向だ。

まず、店舗が減り続けている。2年間にわたってマイナスだ。

利用客数と売上は同じような線を描いて、これもマイナスが続いた。ここに来てようやく100を超えたが、下げ止まったという感じだろう。

そして、客単価がずっと前年割れである。

つまり、そもそも客の入らない店が多くなり店をどんどん減らしていった。その結果、売り上げも客数も減った。店を減らしても、ニーズがあれば客数は変わらないはずだけど、そうではない。

で、来たとしても金を使わない。もしくは値下げによってどうにか来店を維持しているという様子が見えてくる。

この協会に加盟しているのは大手チェーンを始めとして、一定の規模以上の企業が多い。個性豊かな個人経営の店は繁盛しているのでは?という声もありそうだが、そもそもそういう店の絶対数は少なく、エリアも限られているし、こちらはこちらで入れ替わりが激しい。

他方で、ファーストフード、ファミリーレストランなどを含めた全体の数値はプラス基調なのだから、外食に求めるものが変わったのだろう。働く女性が増えて「中食」も需要は手堅い。

あきらかに、「酒」と「外食」ということがセットではなくなっている。夜の店では、まず「お飲み物を」というのが一般的で、店にとっても利益率の高い飲料の注文はありがたかったはずだ。

しかし、夜に「飲まないで食事」をしようとすると、選択肢が少ない。皮肉なことに、店の多い都心ほどそうなる。大学の講義の後に、渋谷で簡単に夕食をとろうとするとサイゼリヤか大戸屋、もしくはラーメンだ。あとは、ファーストフード。

そして、自宅近くの駅についても同じ。サイゼリヤがガストに変わったくらいだ。そりゃ、コンビニが張り切るのもよくわかる。

「最近の若い人は飲まない」というのは、耳タコになるほど聞かされたが、実は「ある時期の日本人が飲み過ぎてた」のではないかとも思っている。

その一方で、飲んでいた世代も高齢化すれば飲酒量は減る。僕もこの2年半ほど、毎日の体重と食事を記録しているけど、そうなると飲み方のコントロールが大切なことが分かる。

そんなわけで飲まない日も増えると、「こんな居酒屋ばかりで、やってけるのかなぁ」と妙な気持になるのだけど、データを見るとやっぱり難しくなってるんだろう。

*なお、企業交際費は法改正の影響もあって増加を続けている。値付けの高い店でも、テーブルの予約から埋まって、大概は接待需要のようだ。ただし、この波を活かしているのは飲食店の中でも一部だろう。