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今回の震災は「複合大震災」という感じになっている。現時点では「被災地救援」「原発保全」「停電対応」の3つが同時に動いている。どれか一つだけでも大ごとなのだから、これが3つ起きているというのは、戦争以外では空前の事態だと思う。
原発は予断を許さないが一定の収束があれば、という前提で考えると今後は「被災地復興」「原発処理」ということになって課題の局面は変わるのだが、実は「停電対応」というのが、もっとも長期化する可能性があり、かつ前例もなく生活や経済へのインパクトも大きいのではないだろうか。
現在の報道は明日、どころか「今日の停電」を伝えるくらい「目の前のこと」で精一杯で、それもまた仕方ない面もあるのだが、たとえば今夏にもまた停電になる可能性は十分に高い。そのあたりの状況をちょっと見ておこう。
まず、図表は電気事業連合会等のHPから抽出したデータを基に作った。これは東京電力管内の「最大電力」の変化である。電力は蓄積できない。したがって、このピーク時の電力を確保することが重要になる。それが刻々と変化するので昨日のように「今日は寒いからやばい」みたいなことになる。
寒いのは朝からわかっていたはずなのだが、停電慣れしていない東電も日本人も対応が後手に回ってしまう。
この最大電力は夏に発生する。かつては冬がピークだったのだがエアコンの普及で1970年頃に「夏ピーク」がその年の最大電力になった。したがってグラフの数値はすべて夏季に記録したものである。
「電力が足りない」と聞いたことは多いだろうし「節電のお願い」もたしかによく聞く。ところが一方で「オール電化」というキャンペーンもあって、電力会社の姿勢はたしかに矛盾しているように思えるだろう。しかし、電力会社はそもそも矛盾を抱えている存在なのだ。

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先週の木曜日(20日)にアップロードしたこちらのリポート「広告会社に見る『イノベーションのジレンマ』」が、想像以上に多くの方の目にとまったようだった。
一口にイノベーションと言っても、ビジネス領域によってその連想は異なるだろう。出典になった本が、イノベーションを計測しやすいハイテク業界のことを書いていたので、そことの「距離感」を感じる人が、自分の業界への適用を嫌がるのも、まあわかる。
ただ、あの本には、業界や時代を超えて「普遍的だな」と思う点がある。それは、「組織の能力は無能力の決定的要因になる」ということだ。
組織を「個人」に置き換えても構わない。ビジネスパーソンだけではない。研究者でもアーチストでもアスリートでも、こうした壁にあたったケースは多いのではないだろうか。
いずれにせよ、得るところの多い再読だった。



(2011年1月13日)

カテゴリ:マーケティング
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伊達直人が、いきなり注目である。日本を代表するはずの「直人」があまり評判がよろしくない中で、まあ「直人一族」としては悪い話ではない。
もっとも、単純に「善意が素晴らしい」という賛美する空気ばかりでもないだろう。何となくピント外れの類似行動もあるようだし、そもそも現金の寄付の方がいいのではないか?とかいろいろ議論はある。(現金寄付も出てきたようだが)
ただ、地震被災地に「使えない衣類」を送りつけるような、勘違いの善意に展開してしまわないことを願いたい、と思いつつ、僕がこのニュースで感じたことは全く異なる。
「伊達直人という名前で、寄贈する」これって、ある種の消費欲求なんだろうな、ということだ。そして、人は「動機づけ」があれば行動するということである。
善意を消費行動で片付けるな、と言われるかもしれないけれど、じゃあ「伊達直人」という送り主の名前をつけるだけで、どうしていきなり「善行」が広がるんだろうか?

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「じゃらん」の手数料値上げの件がもつれている。最近、宿泊団体も要望書を出したという。このニュースによるとじゃらんネットのポイントを他サイトと共通化する中で、ポイント付与時に旅館やホテルがリクルート側にポイント付与分を支払い、使用時に宿泊施設に支払うというものだ。
いわばポイント分を宿泊施設側が前払いするわけだが、このポイントをユーザーがホットペッパーで使うかもしれず、結局手数料の「値上げ」という形で報じられた。その後箱根の宿泊施設と「団交」のようなこともおこなわれて、かなりもつれている。
先の記事にはこうある「2人以上1室利用では現行の8%が10%に、シングルではシステム利用料率自体の引き上げと合わせて4%から8%に倍増させる。3万円のシングルプランをじゃらんネットを通じて販売した場合、リクルートに支払う手数料が従来の1200円から2400円となる。」
リクルートの、このビジネススタイルを、どう捉えればいいのだろうか。この方のブログで書かれているように、宿泊施設側にも怠慢だった部分もあるだろう。ただし、僕はこの一件について、リクルートの方法論に疑問と寂しさを感じている。

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新刊のお話、その1。
朝日新聞出版から「マーケターを笑うな!」という本を出した。家のネコを無理やりセールスレディに仕立ててみたが、無理やり起こされたので不機嫌な顔になってしまった。無愛想な売り子で申し訳ない。
きっかけは編集者の人が、昨年のad techで僕に関心を持ったらしく、ある時相談にいらっしゃった。なぜか「webマーケティングの本など」と言われので、「よく知りません」と言いつつ、お話をしているうちに「マーケティングではなく “マーケター”の本にしませんか」ということでまとまった。
で、僕がタイトル案だけを先に口走った。
「たとえば、『求む、マーケター』とか『マーケターを探せ!』とか」
先方は、フムフムとメモをとっている。
「なんか、よく分からないが『マーケターを笑うな』とか」
そんな初対面の1時間ほどの雑談を終えて別れたのだが、先方の編集長が『マーケターを笑うな』をいたく気に入ったということで、企画がスタートした。
これは、マーケターの仕事や発想法、あるいはキャリアや組織でのあるべき姿を論じてみた本だ。
3.0がどうしたとか、あえて最先端の話は書いていない。ただし10年後でも重要なこと、つまり「変わらない部分」について書いている。「知っている話だ」と思う人もいるかもしれないが、「知ってるはず」のことを再整理して新しい視点も入れているつもりだ。
マーケティングの本、と言っても最近出ている本はよく見るとメディアの変化に対応するための「プロモーション」の本だったりする。この本は、メーカーなど開発サイドのマーケターの視点から、チャネルやプロモーションの現場まで「あちらこちらで頑張るマーケター」のお話を書いた。

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