IMG_2291宝塚歌劇の花組公演を観に行った。いわゆる「和物」のショー『雪華抄』が前半で、後半が『金色の砂漠』だ。作・演出が上田久美子というのが気になっていた。

『翼ある人びと–ブラームスとシューマン』で驚き、初の大劇場公演となる一昨年の『星逢一夜』も楽しんだ。

それ以来の公演で、舞台は砂漠の王国だ。いつか、と言われると困るんだが解説にも「いつかの時代」としか書いてない。「ガリア」という言葉が出てくるから、古代ローマとかそのくらいのイメージか。オペラ「アイーダ」のような世界で、要するに相当昔だ。

主役が奴隷で、トップスターがいきなり踏み台にされるというのも驚くが、彼は奴隷として仕えた王女と恋に落ちる。当然ながら、周囲は受け入れようとはしない、時代を遡って幼年の頃からもさまざまな因縁も明らかになるが、彼らは旧弊を打破できない。 >> 上田久美子の「壁」なのか?宝塚花組「金色の砂漠」の続きを読む



音楽は好きだけれど、聴き方は相当保守的だと思う。いまだに、CD中心だ。これは、聴くジャンルの多くがクラシックだということがあるだろう。配信サービスの品ぞろえが当初はあまり良くなかったのだ。

その上、スピーカーでしか音楽を聴かないということもある。20代の後半くらいまではヘッドフォンを使っていたのだが、どうもある時から苦手になった。耳に辛いので、まったく使わない。だから家でしか音楽は聴かない。

そうなると、ipod以降のサービスとはあまり縁がない。

だから昨年くらいから話題になっていた定額配信サイトも見過ごす、というか聞き過ごしていたんだけれど、改めてspotifyを聴いてみたらクラシックが相当に充実していた。

spotifyの無料サービスには制約がある。そして、こういう制約はポピュラーを前提にしているのだろう。

まず、無料だとちょこちょこと広告が入る。ピアノ曲集なんかだとあまり気にならないけれど、シンフォニーだと楽章間に全部広告が入る。モーツアルトのレクイエムの一曲ごとに「第一興商」とか「ネットフリックス」とか賑やかになってしまう。

またスマートフォンだと、強制的にシャッフルになるようで、これもクラシックだと「勝手に楽章シャッフル」になるわけだ。

オペラとかだと、相当楽しいことになるんだろうけど。

ただし、PCやタブレットだとシャッフルにはならない。だから僕の場合は関係ないかと思っていたら、落し穴があった。PC・タブレットは月間上限が15時間なのだ。デバイスによって、リスナーの特徴を見切っているのだ。

というわけで、有料会員になった。 >> spotifyのクラシックは相当にいいかも。の続きを読む



51o0z-OnpoLブルックナーという作曲家がいて、結構人を選ぶ。好きな人は好きだが、嫌いな人にとっては退屈だろう。

僕はそれほど好きではない、と書いてみたものの昨年もわざわざバレンボイムを聴きに行っている。まあ、なんというかある時に無性に聞きたくなったりはするのだ。

ただ、本当に熱心なファンではないのだろうなと思う。というのも、好きなディスクはカラヤンとかショルティだ。「本当の愛好家」は、ヴァントや朝比奈隆を好むらしい。

あと、熱心なファンが好む「9番」が今ひとつ苦手だ。

で、その理由はわかっている。たしか、高校が大学の頃に映画館で見た、とある映画の「予告編」に第2楽章のスケルツォが使用されていたのだ。

このスケルツォは、ブルックナーの中でも妙に暴力的なところがある。7番のようにグルグルと空が回るような「天の音楽」の感覚は大好きなんだけど、これは「地の音楽だ」。それが3拍子だから、3本足の怪物がドタバタしているような感覚になる。

そして、その映画は日本映画だった。ただ覚えているのは「琵琶湖で女がマラソンをしてる」ような話だったと思う。何か、走る女のバックにブルックナーが響くのだ。

あの頃はそれなりに映画を見ていたので、この予告編も複数回見たのかもしれない。そして、本編は見ていないのだが、何だか「イヤーな感じ」の印象がある。それ以来、ブルックナーの9番はどうも苦手なのだ。

しかし、そんな僕の記憶は本当に正しいのだろうか? >> 伝説の謎の映画「幻の湖」とブルックナー。の続きを読む



71p2x-nyxl昨年は、あちらこちらの舞台に行って、勘定してみたら64回だった。

クラシックのコンサートが一番多く、あとは落語や能、たまに宝塚のミュージカルなどに行く。映画館は一度も行かなかったが、その前年がスターウォーズの1回きりだから、まあそんなものだ。

ただ、何となく興味が変わってきた気もする。音楽だと、オーケストラもいいけど、ピアノソロや室内楽に足を運ぶようになった。オペラは減ったが、能には月2回くらいはコンスタントに通う。

大きな音が億劫になったのかもしれないが、より抽象的なものに惹かれている気もする。殊に能などは、抽象性が高い。

だからだと思うが「難しくないですか?」と聞かれることが多い。たしかに簡単ではないが、じゃあ何が面白くて観に行っているのだろう?と考えてみた。

実は、能の抽象性というのはたしかに「わからない」ところがある。多くは夢幻能という形式だが、そこでは「何らかの霊が降りてきて舞をする」ような展開がある。哀しみとか憂いのようなものはあるのだが、そこであの面だ。実際の表情を見せないことで、想像をしていくことになり、たしかに「わかりやすい」とは思えないだろう。

しかも人の霊ならまだしも、先月観た『遊行柳』などは「柳の精」が舞うのだ。もう、どう考えればいいのか。 >> 分かりやすいコンテンツって、実は不自由なんだと思う。の続きを読む



91zrdjrpsdl折角だから、あと1回くらい今年の本を書こうと思って、最後はアート&音楽篇。

音楽については、以前紹介した『武満徹・音楽創造への旅』(立花隆/文藝春秋)が戦後文化史としても出色だった。

もっと間口は狭い感じがするものの、読みやすくて面白かったのが『マーラーを語る 名指揮者29人へのインタビュー』(ヴォルングガング・シャウスラー/音楽之友社)だ。

アバドからジンマンに至る29人の指揮者に、マーラーの音楽について尋ねていくという構成だ。

マーラーが好きで、いろいろな指揮者を聞いている人にとってはもちろん興味深いと思うけれど、このインタビューはマーラーを通じて「指揮者の思索」を浮き彫りにしているところが面白い。

つまり、「ああ、結構深く考えているんだな」とか「意外とアホだなこいつ」のように、指揮者のアタマの中を開いて覗いているような感じもするのだ。

個人的に面白かったのは、バレンボイムとブーレーズ、あるいはマゼールなど。カラヤンのことを語るアバドや、そのアバドからの薫陶に感謝するドゥダメルなど、指揮者同士の出会いや影響を知ることもできる。

ちなみにブーレーズによれば、マーラーの音楽素材は「葬送行進曲、軍隊行進曲、レントラー舞曲、それだけ」ということらしい。まあ、そうかもしれないけど。 >> 【2016読んだ本から】③音楽とアートなど。の続きを読む