tohaku1-thumb-500x355-1144今年の3月に京都へ行って、大徳寺、妙心寺、相国寺などの禅寺ばかりを回った。冬の特別公開目当てだったこともあるが、どこも落ち着いて静かで堪能できた。

金閣や清水寺は外国人観光客も多く、相当にごった返しているという。その一方で、禅寺は地味だし、訪れるのはリピーターだろう。

しかし、禅宗美術の名品はなかなかに味わい深い。障壁画や襖絵などを巡り、庭で一息ついていると、これが京都めぐりの楽しみだなぁとつくづく思う。

その時に、「禅」をテーマにした展覧会が京都から東京へ巡回することを知った。最近の和物の展覧会は相当に混雑するので、初夏の京都へ行こうと思っていたのだが調整がつかず、東京で観ることにした。

日中はシニア層で相当に混むので、金曜の17時を狙う。20時まで空いている日は、この辺りが谷間になるのだ。

ところが、東博に行ったら拍子抜けするほどに空いている。おかげで、すべての作品をじっくり間近で見ることができた。ふと、周りを見ると女性客が少ない。たしかに、坊さんの掛け軸が並んでいるようなコーナーも多く、展覧会としての華はないかもしれない。 >> 蔵出し作品が集結で、禅は急げ。「禅 心をかたちに」東京国立博物館 の続きを読む



61grbvzo9flトランプが大統領になるそうな。

今日あたりは、そんな話で持ちきりだろうから、あえて細かくは書かない。ただ、何となく日本人を含めた国外の人からはわかりにくい「アメリカ」というのは、実は過去に眠っているんだろうと思ってる。

それが、プシュ!と噴出する。共和党の候補が勝つときは、そんな感じだ。ブッシュJr.は父に比べてクレバーなイメージは薄かったが、それを逆手に取った。彼が演じたのは、古き良き米国のカウボーイだったと言われている。

マルボロの広告の世界観で、テキサス出身というのもまたわかりやすい。

ディズニーランドの「ウェスタン」の世界だろう。

というわけで、郷愁のアメリカを音で感じるディスクが、このHoliday for Orchestra! だ。

いきなり「草競馬」で始まるけど、演奏しているのはフィラデルフィア管弦楽団で、指揮はユージン・オーマンディ。

超一流のオーケストラが、この手を曲をしっかりやるところがさすがだ。 >> 「オーケストラの休日」で聴く「あの頃のアメリカ」の続きを読む



img_2084ウィーン国立歌劇場日本公演

指揮:アダム・フィッシャー

ニーナ・シュテンメ トマス・コニエチュニー 他

2016年11月6日 東京文化会館大ホール

ワーグナー「ニーベルングの指環」

第一夜「ワルキューレ」

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今年は、シカゴとムーティの「巨人」で年が明けて、バレンボイムのブルックナー、ラトルとベルリン・フィルの「第九」というあたりで力尽きた感じもあり、年の後半は蟄居していようかと思っていたのだが、直前になって行くことにした。

ひとことで言うと、こんなに「ワーグナーのドラマを楽しめる」という当たり前のことがすごいと思った。

なんか、賢くない感じの感想をいうと、出てくる歌手は誰もうまくて、鳴っている音が絶品。そりゃ、ウィーンだからといえばそうなんだけど、こういう演奏はやはりなかなか聴けないと思う。

オーケストラはオーボエの太くて豊かな音がしっかりと芯になり、ホルンの音色が全体を包む。クラリネットの歌も印象的だ。ワーグナーのハーモニーがこんなにクッキリとわかることがすごい。団員が、楽譜全体をつかみ、かつ一人ひとりの役割をわかっているということなんだろう。 >> フツーにワーグナーを楽しめる凄さ。ウィーン東京公演のワルキューレ。の続きを読む



(2016年10月24日)

カテゴリ:見聞きした

816uyhvrwl-_sl1500_自然環境が作曲家に与えた影響は、もちろんあるんだろうなと思う。

シベリウスの音楽を聴いて、南国の空を連想するのは難しい。また、「泥臭いけど妙に明るい」と思ったら、「イタリア奇想曲」だったりする。

もっとも、「アルペン交響曲」のようにズバリと言われると、「はい、わかりました」という感じになって、夏の信州で聴いていても妙に納得してしまう。

ただ、作曲家の経験とまったく関係ないのだけれど、勝手に「こういう時に似合う」という音楽があって、僕の場合「ドヴォルザークと里山の秋」は最高の相性だと思う。

なんというか、ドヴォルザークの田舎っぽさというのは、西洋東洋を越えて普遍的なんじゃないだろうか。

チェコの田舎はもちろん、中国内陸の水墨画の世界に合いそうだし、ケンタッキーの草原でもいいんじゃないか。「交響曲」のようにフォーマルな曲にしても、「スーツにネクタイ」という風情ではない。「コーデュロイのジャケットにネルシャツ」という感じがする。 >> 秋で、芋煮で、ドボコンなのだ。の続きを読む



img_1951 大仙厓展-禅の心、ここに集う 出光美術館

ポスターにもなっている「指月布袋画賛」は、誰が見ても「かわいい」と思うし、ちょっと気になる展覧会だ。

仙厓は、江戸時代の禅僧で、博多の聖福寺で住持をつとめていて、九州とは縁が深い。画は福岡市美術館、九州大学と並んで、出光美術館が多く所蔵しており今回はいわば「三大コレクション」からの出品となる。

「大」がつく展覧会なのだ。

もちろん、「かわいい」だけの展覧会ではない。風景もあれば、有名な「○△□」の抽象画も、ある。ただ、布袋や犬、猫などの描き方はたしかに「かわいい」。他の日本画でも感じるが、現代のコミックに通じるある種の潔さのようなものもある。

一方で、晩年には寺の跡を継いだ湛元が藩から処罰されて、仙厓が戻ったこともある。その頃に書かれた「不動明王」の絵などは、また異様な迫力を見せる。

しかも、亡くなる直前の作だ。ちなみに、彼は米寿まで生きた。 >> 「かわいい」だけではない幸福感~「大仙厓展」の続きを読む