A16AtR2ph7L信長・秀吉・家康、という3人はよくできた組合せだと思う。

「誰が好きか」という話は、日本人の大人同士だとそれなりに成り立つと思うけど、細かい業績以上にキャラクターが立っているからだろう。

「ホトトギス」のように、わかりやすい喩えもある。

僕は子どもの頃は、「家康派」だった。3人の伝記を読んで、「最後に勝つ」というところに惹かれたのだと思う。あとは「江戸をつくった」ということにも親近感があった。先祖が会津の佐幕派であったことは後に知った。

ピンと来ないのは秀吉で、信長は面白いけれど、その凄味が理解できなかった。その後は、どちからというと「信長、すげえなぁ」と思うようになったが、やはり家康の方に馴染みがある。

時代によっても変化はあると思うが、70年代前半の高度成長期は秀吉も人気があったと思う。田中角栄が「今太閤」と言われたのが典型だろう。小泉政権の頃は信長が流行ったが、その後はゲームの中での特異な造形と相まって、やはり人気は強い。

家康については、緩い追い風のようなものを感じるが、これは江戸時代への関心が高まっていることと関係あるだろう。「エコシティ」的な視点もあれば、歌舞伎や落語が注目されてることも関係あるだろう。オリンピックを前にして、東京についての「都市論」が再度注目される中で、江戸への関心が高まっていると思う。 >> 信長・秀吉より、家康の時代なのかな?の続きを読む



81N0mI5-17L金曜日の朝一番のニュースでニースの「事故」を知った。NHK-BS1の第一報は、「トラックが突っ込んだ」ということだったのだ。

丸一日以上経っても、背景には不透明な部分が多い。

6月に起きた米国フロリダのナイトクラブの乱射事件もそうだったが、組織的ではない行動だとすると、今回の事件をテロというべきなのか、個人的には少々迷う。

ただ、たしかなことが1つある。それは、その気になった一個人が相当数の市民をあっという間に殺害することが可能で、それがいつでも起こり得る時代になったということだ。

オランド大統領が、黒っぽいネクタイをつけて悲しげな表情で声明を発表する映像もどこか既視感がある。

ダラスの警察官殺害事件の追悼式典に出席したオバマ大統領は「こういう式典に出る機会があまりに多すぎる」と語った。

ここに来て、世界中でとめどもない暴力の連鎖が起きている。それ自体も恐ろしいが、ニュースを聞いている方がどこかマヒしていくことは、それ以上に恐ろしい。

ただし、どうすればいいのかは、誰にもわからないのではないか。 >> テロの時代に、歴史を読み返す。の続きを読む



41Kxg85xZJLまだ報道の段階ではあるけれど、天皇が退位の意向を示されたという。手続き的には皇室典範の改正になるが、いわゆる「譲位」についての規定を決めるのは相当難しいかもしれない。

明治以降は譲位を想定していないのだが、それは政治的な恣意性を避けるためと言われている。

江戸時代は、徳川幕府と朝廷の間にさまざまな駆け引きがあった。幕府の意向、つまり時の実質的政治権力が天皇の即位に影響を及ぼすこともあったわけだ。

そんな古い話を、と思われるかもしれないが現在の典範の規定は歴史的な教訓を含んでいると考えていいのだろう。

江戸時代の朝幕関係で、もっともドラマチックなケースは、後水尾天皇を巡る話だろう。徳川家は二代将軍秀忠の末娘和子を入内させて、天皇家の外戚となることを目論む。

ところが朝廷への監視を強める幕府との間にトラブルが絶えず、婚儀の9年後に後水尾天皇は退位する。この辺り「紫衣事件」などが特に有名だ。

その後9代の天皇の退位理由を見ると、7人が譲位でしかも20代から30代の間におこなわれており、即位した天皇は20歳以下だ。このような運用が実際におこなわれていたことになる。 >> 天皇、徳川家、光琳、そして金銀の行方など。の続きを読む



61umgNt+vIL別に40歳になってなくても構わないのだけれど、葉書を書くことに関心を持つのはちょうどその頃じゃないかとも思う。僕はその年で会社を辞めたこともあり、何となく手紙や葉書を書く機会も増えた。

もともと字を書くことが好きだったこともあるが、コミュニケーションのテンポやリズムを意図的に変えたくなるのかもしれない。

よくわからないけど、ちょっといいモノがほしいと思って鳩居堂の便箋や葉書を手元に置くようになった。詳しい人であれば、日本橋のあの店や、京都のあちらの老舗が、といろいろあることは承知している。

ただ、そこまで凝るつもりはないし、店舗の多い鳩居堂は何かと便利だ。絵葉書などをネットで買おうとすると、単価が安い割に送料が高く、その上好きなものが選びにくいので、店で買うことになるのである。

ふと、思ったのは「とらや」に似ているなと。

あまりにも有名になったので、通の方はいろいろと他の店の品を挙げることもあるようだが、口に運ぶたびに感心する。「ああ、やっぱり」という感覚だろうか。 >> 40歳過ぎたら鳩居堂の絵葉書でも。の続きを読む



91ivmd5OYuL泡坂妻夫 『亜愛一郎の狼狽』 創元推理文庫

泡坂妻夫という名を聞いて、「そうそう」と思う人は少ないかもしれない。1933年、つまり昭和一ケタの生まれで、2009年に75歳で没している。

東京神田の紋章上絵師の家に生まれて、家業を継ぎながら作家活動をしてきた。また奇術に造詣が深く、作品にもよく登場する。ミステリー小説界では、一目置かれる存在だった。しかし、彼の作品の多くは誰にも真似できないような独特の技によって精緻に組み立てられている。

小説の世界は、普通の街並みや人々が出てきて、ミステリー独特のおどろおどろしい世界ではない。ただ、どこかねじれたような奇妙な事件が起きていく。

深刻な話は少ないが、どこか人の心理を虚をついたようなところがあって、ドキリとさせられることもある。

また、氏の作品に登場する人は、みなどこか飄々としている。そして、何よりも肩に力の入ったところがない。ミステリー作家の中には、構想が大きくなるほど、どこか大上段になる人もいるが、あくまでも粋だ。小説の構成を考えて、読者を騙すことをどこか楽しんでるようで、それが登場人物の飄々とした雰囲気とどこか重なる。

絵師、奇術師、そして作家を多面的な才能を持った方だが、まさにプロの職人だ。 >> ジンワリ楽しい、昭和推理の傑作「亜愛一郎」シリーズの続きを読む