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【書評】ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ニコラス・G・カー 篠儀直子訳
青土社
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「この本はネットを糾弾し、ネット以前の世界へ戻ることを推進する本ではないかという性急な推測が、タイトルだけを見た時点ではなされがちであるかもしれない。」
訳者あとがきで、このようなことを書かねばならないこと自体、この邦題は訳者にとって不本意だったのかもしれない。
この本のベースになった論文が”Is Google Making Us Stupid?”であり、これはまさに「グーグルでわれわれはバカになりつつあるのか」という感じではある。しかし、この本の原題は”THE SHALLOWS”だ。「浅瀬」という意味から転じて、「浅薄な」という意味合いの言葉だ。
タイトルの原題のことを長々書いても仕方ないと思うが、どうしても「ネット・バカ」という邦題で誤解されているような気もする。この本は。決してネットを糾弾するほんではないし、単純なメディア論でもない。
人は情報からどのような影響を受けてきたのか。その影響は、メディアの形態によってどう変わるのか?ということを問いかけている本である。
インターネットが人の思考自体を変えてしまうのか?というこの本の問いかけ自体は、自然なもののようであるが、あまり正面切って論じられてなかった。しかし、それを考えるのに「紙の本とウェブ」のような比較論自体が実は「浅薄」であることを、この本は教えてくれる。

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(2010年7月14日)

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SF作家のジェームス・P・ホーガンが亡くなったというニュースの見出しを見た時、「まあ、そういう歳だからな」と勝手に思っていた。むしろ、「まだ存命だったんだ」という気持ちだったほどだ。
記事を見て驚いた。まだ69歳だったのだ。
代表作「星を継ぐもの」は1977年の作だという。30代半ばであれだけの作を書くということ自体は、別に驚くことではないと思うのだが、なぜかもっと昔の大家の作品という感覚があったのだ。ストーリーが骨太でロジカル。かつ登場人物に落ち着きがあるので、僕が勝手に思い込んでいたのだろう。
ホーガンは続く「ガニメデ星の優しい巨人」「巨人たちの星」などを一気に読んだ。SF独特の大胆な設定が、最終的にカチリと収まる。破天荒ではないけれど、読後に「希望」を感じる。とても優れた小説だと思う。
この夏休みに再読してみようかな。



池田紀行さんより「キズナのマーケティング」を献本いただいた。 ソーシャルメディアマーケティングの思考と実践がバランスよくまとまっている。「今」を切り売りする本が多い中で、「過去と今と未来」へのラインが描かれている。そんな印象をもった。 個人的に一番気になったのは、最後のところだ。「これから、真の人間マーケティングが始まる」ということに尽きる。 別に今までは「非人間マーケティング」だったというわけではない。しかし、この15年ほどはテクノロジーの波の中で、マーケティングに関わる人がいろんなことを見失っていたと思う。自分自身を振り返ってもそうだ。 少し長い眼で見てみよう。1980年代から、広告表現はある意味の「全盛期」を迎えた。表現自体が一人歩きして、アートとしてもてはやされた。この時代をメディアとの関連で見ると興味深いことがわかる。 75年ににカラーテレビの普及率がほぼ90%を越えて、80年までにほぼ100%に達する。そして、テレビと新聞の広告費が逆転したのが76年。それ以降、テレビと新聞の広告費の比率は35:30くらいで安定する。 テレビがメディアの王者として磐石になり、新聞も一定の影響力を保つ。表現のインフラが安定したことは、二重の意味でクリエイティブの隆盛に影響した。1つはクリエイターが、表現自体に専念できること。もう1つは広告代理店の経営が安定して、コミッションの収益により、クリエイティブの収益性を補完できたことだ。 この安定は90年前後に大画面テレビが登場(”画王”とか覚えてますか?)することで隆盛を迎える。 やがてバブルの崩壊とともに、メディアの変革が起きる。1995年はマイクロソフトの新OSとインターネットがインパクトをもたらした。新世紀に入る頃にブロードバンドや携帯からのネット接続の時代になった。 このように振り返り80年から「メッセージの15年」「メディアの15年」を経て、「次の15年」の境界線に立っているのかな?と考えると「真の人間マーケティングが始まる」というのは納得感が高いのである。 ことさらメッセージとメディアを分けることは、違和感もあるだろうけど敢えてこう書いた。実際にマーケティングや広告関係者の関心には偏在があったと思うし、そもそも広告代理店の組織が分化を放置していたところもある。 あとは、人の問題だ。自分の領域を固定しないで飛び出て行く人どうしが、何かを生む。まずは自分自身という人間を「拡張」しなくてはいけないのだろう。 池田さんの本には、そのヒントがたくさん詰まっている。