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冨田勲氏が逝去された。

多くのメディアの見出しに「シンセサイザー」という言葉が一緒に並んでいる。もちろん、シンセサイザー奏者としても有名であるが、作曲家であり、映画やテレビを中心にたくさんの作品を残した。

とはいえ個人的な記憶は「シンセサイザー」という未知の世界を拓いた人、というイメージが強い。ちょうど中学生の頃にアルバムが発表されて、幾度となく聴いていた記憶がある。

後になって、「新日本紀行」などのタイトルバックに名前を見つけて「あ、そういう人だったんだ」と思った記憶がある。失礼な気もするのだが、そのくらい「シンセサイザーの冨田勲」だったのだ。

今にして思うと、氏のシンセサイザーのアルバムは絶妙なポジションを突いていた。サウンドは斬新で、録音ならではのさまざまなテクニックが駆使されている一方で、その素材はおもにクラシックに求めている。

ホルストの「惑星」ムソルグスキーの「展覧会の絵」、あるいはドビュッシーの「月の光」などだが、いわゆる典型的で硬派なクラシックではない。誰もが口ずさめて、色彩感が強く、表題性の高い曲を選んでいる。

だから冨田勲のアルバムを聴いた人が、どのような音楽を聴いていったかというのも結構さまざまだろう。シンセサイザーの魅力に取りつかれた人もいれば、アルバムをきっかけにクラシック音楽を聴き始めた人もいるだろう。

強烈なインパクトで、実に広範な影響を及ぼしたと思うが、単なる「音楽アルバム」を超えた存在だったと思っている。

冨田勲のアルバムは、単なる編曲ではなかった。それは当時の聴き手にとっては共有されるべき「未来」のイメージだった。そして、それは地球の外へと広がっていた。当時の中高生にとっては、十分「妄想に値する未来」が感じられたのだ。 >> 冨田勲が感じさせてくれた、未来。の続きを読む