実際の物価高騰以上に、人々が不景気を感じて、支出を抑える。そのため消費が縮み、さらに不景気になる...という循環は今に始まったことではない。
98~99年頃に研究開発の同僚とそういう議論をしたことがある。当時は「モノ余りになっていて買うものがない」とか「貯蓄に回って消費に回らない」という辺りが論点だった。誰かが「現金だと貯金するなら"買い物券"でも出せば」と言ったら「そんなことしても使途金額の総和が増えるわけないだろう」と先輩に一蹴されていた。
その後「地域振興券」という名の"お買い物券"が登場したが、その結果は御存知の通りである、広告会社の片隅で与太話としても通用しない発想が、政府の政策になったのだから、まあ、何と言おうかである。
一方で、実際に気分が景気に影響していることは最近のデータでもわかる。
日銀の「生活意識に関するアンケート」の最新リポート(pdf)の3ページにある「景気判断の根拠」を見てみよう。
1 自分や家族の収入の状況から 53.8%
2 勤め先や自分の店の経営状況から 35.8%
3 マスコミ報道を通じて 35.0%
この3の増加がダントツに高い。昨年の12月、今年の3月と比べると24.5→30.1と来て今回の数字になる。上位2つの指標は横ばいから減少(!)なのにも関わらず、である。
報道に悲観的なトーンが強すぎるのではないか、ということがすぐに推測できる。前回指摘したガソリンもそうだが、ここまで値上げ報道が大きくなると、実際に売り場に行く前に萎縮するだろう。
ただし値上げと言っても、加工食品が中心だし、野菜の卸売り価格などはむしろ下落している。実際にスーパーでの総支出を、今まで通りに抑制することは、主婦なら可能だと思う。
そう考えると、今年に入ってからのマス広告の不調もうなずける。これほど「モノを買ったら損する」ような報道が溢れるメディアに、広告を出すということが矛盾した行為のようなものではないか。
何も報道を楽天的にすればいいとは思わないが、ヒステリックで深い分析のないニュースにつき合わされている広告は少々不憫にもなる。