
動物でも加えて「ハイ、これは広告の世界のお話ですよ」とでもしない限り、もはや家庭を描くことは虚構でしかないないし、そこにあるはずの幸せも蜃気楼のようなものなのか。
なんて考えていると、究極の家族がCMに登場することとなった。
OTONA GLICO(おとなグリコ)の「サザエさん」である。
カツオやワカメやイクラが、それぞれ「大人」になって再開する日のお話で、まあ、アイデアから仕上げまでクリエイティブのみをとって見れば、大変にユニークな作品である。まあ、業界内の話題や評価は高いのだろうと思う。
だが、法事で再開する彼らの映像を見ていると、これは、もう幸福の極北としか表現できない、極寒の世界である。そこに「一家の幸せ」は存在しない。だが、それぞれの幸せが、孤立して共存しているような世界に見える。
2008年は広告の世界で家族の解体が明白になった年として、ある意味記念するべき年となった。
アイデアはおもしろいと思うが、個人的にはどうしても「おもしろい!」と無邪気に感じられない。ただ、それはマーケティング的に云々といことではない。40代半ばともなると、もうカツオやワカメなどは「まだ若くていいな」としか言いようがなく、なんとも自分の年齢を再確認して侘しくなるのだ。
ネコのたまが三代目というだけで、「ああ、もう二頭のネコが亡くなったのか」と感じ入ってしまう。法事にいたっては、他人事ではない。
まあ、それは個人的な歳の問題なのだが、それを差し引いてもこの意図的な異空間は、広告というよりも鋭利な社会批評として成り立っていると思う。
ただし我に返ってこの広告をマーケティング的に分析すると、商品ブランドの名前との連想がいかにも弱い。「OTONA GLICO」のCMは知っていても、これが「アーモンドプレミオ」「ディアカカオ」という商品であることは、あまり覚えらえれていないようだ。(調査をしたわけではないが、一定の人数に尋ねることは可能なので)
販売動向によっては、「クリエイティブと広告効果」の格好の研究材料になるかもしれない。