
先週の金曜日の夕方に上野の「大琳派展」に行った。国立東京博物館である。
混雑を覚悟で行ったのだが、存外に空いていて驚いた。いわゆる「和モノ」の展覧会はここ何年か、かなりの活況である。しかも琳派人気は、美術ファン以外も巻き込んでいる。
それなのに、空いている。出品の都合で、後半の方がたしかに見所は多いのだが、雰囲気が違う。
最初は冗談で「不況だから?」とか話していた。まあ1500円のチケットは、むしろ不況に強そうな娯楽なのだから、あまり関係ないだろう、と。だから冗談のつもりだった。
でも、歩いているうちに「不況のせいかも」と思うようになった。客層の中で「あるセグメント」がゴッソリと抜けているのである。
最近の美術館の客層は主に3つのセグメントから成り立っている。
1つ目は中高年女性どうしのグループである。これは、日本の美術館訪問者(あえて美術ファンとは書かない)を支えてきた人々で、年々層が厚くなっている。20年ほど前は印象派に群がっており、いまは和モノに熱心である。
2つ目は若い人(大雑把だけど)である。木場の現代美術館などで「イサム・ノグチ」の盛況を支え、06年の若冲ブームに群がり、休みには直島に行くような人だ。
で、この2つのセグメントは先日もちゃんと健在であった。では、どこが抜けたのか。
それが3つ目の「シニアのカップル」である。
彼らは女性がリードして、定年後の男性が一緒に街に出てくるというパターンである。平日の映画館などでもよく見られる。必ずしも「美術が好きで」というよりも、「暇つぶしとしてのレジャーの一環」としての美術館を選んできている。
だとすると、彼らが減っているのは不況の影響かもしれない。
美術ファンなら、好きなものは他の支出を削ってでも行くだろう。だが、単なる暇つぶしのレジャーなら、不況時に真っ先に削減の対象になる。しかも彼らは美術館目当てではない。そのあとに食事に行ったりするのもセットだったはずだ。
これが今回の不況のいやらしいところである。
ここ数年に定年を迎えた人は、退職金のある程度の部分を株式やそれに連動するリスク型金融商品にあてているといわれる。まあ、数年間は上昇基調だったので、それはそうだろう。それだけに、今年に入ってからの資産の目減りは半端ではないと思う。
彼らをあてにしていて、かつそこそこの上得意にしてきた業種はかなり逆風を受けるだろう。
今度の不況は結構悪性だという気もする。大げさな成人病というよりも、インフルエンザをこじらせた感じである。うかつなことから、決定的な破綻になるんじゃないだろうか。
そんなことを思いつつ久しぶりにプロ野球を見たら、巨人の勝利目前のCMが公共広告機構だった。電車の中で「電通の本」の中吊りを見る日も近そうだ。