その学生は「広告が第一志望です」とハッキリ言った。
その上で、こうも言った。
「広告業界が大変な時期にさしかかっていることは、知っているの?」
「はい、まだ詳しく研究したわけではないのですが、大手の代理店でも今年は厳しいと聞きます」
「そっか......細かい数字はともかく、たしかに大変だ。理由はわかっているの?」
「はい。やはりインターネットの浸透で新聞やテレビの広告が減ったからだと理解しています」
「それでも、いいの?」
「他の業界にくらべて、"やりたい"と思うことがあるのは広告なんで。もっとも今どこに入っても、10年~20年後に同様とは思えません。そのくらいの心構えは持っているつもりです」
「5年かもよ?いや、もっと短かったりして」
「......」
「わかった。じゃあ、話をする前に一つ確かめておきたい」
「なんでしょうか?」
「広告業界に行きたいなら、行けばいい。ただ、大手なら一生いい待遇で勤められる、という幻想を持っているならやめたほうがいい」
「そうは思っていないつもりです」
「別に広告業界に限ったことではない。今の時代"就職先を選ぶ"というのは、"キャリアのスタート地点を選ぶ"ということなんだ。そういう覚悟があるなら、話を聞こう?」
「はい、ありがとうございます」
「で、広告業界というけど、代理店志望なんだね?」
「はい。電通や博報堂などの大手の総合代理店を第一志望に考えています」
(続く)