「たしかに、新聞やテレビなどのマスメディアの価格も下落せざるを得ない。ただ、全部ネットのせいにするのは間違っていると思う」
「そう...なんですか?」
「最近、雑誌が廃刊になったり、新聞やテレビの広告が減少しているのは知っているよね?」
「はい...必ずのように"インターネットなどに押されて"とか書いてありますけど」
「たしかにそういう面もある。広告主は効果が分かりやすい施策を選ぶからね。でも、もっともっと根深い問題があると思うんだ」
「なんでしょうか?」
「それは、日本の人口構造が変わって、いわゆる"成熟化"が進行していることだ」
「"成熟化"ってわるいイメージはあまりないんですが」
「簡単にいえば、もうモノは溢れている上に、高齢者が増えている。広告を見て"ああ、これ買いたい"という気持ちになりにくい」
「なんか、暗い感じですか...?」
「まあね。でも、生活していく上では必ず消費行動が起こる。ただ、広告の刺激だけで購買しない傾向は全年代で着実に広まっている。ネットで調べたりすることは、それに拍車をかけるけど、まず前提にあるのは"成熟化"だ」
「僕なんか、やっぱり広告が気になりますけど」
「それは君が若いからだし、広告に関心があるからかもしれない。それに、広告がまったく効かないわけじゃない。スーパーやコンビニで売っている商品などでは"一定の効果"はある」
「それでも、昔ほどではないんですね...たしかに広告してないけど、安い商品を買うこともあります。コンビニのカップ麺とか」
「そうだよね。だとすると、広告代理店も仕事の局面を変えていかないと」
「どういう風にですか?」
「君はデパートで買い物する?」
「イヤ...」
「どうして?」
「やっぱ高いイメージあって、若い人向けじゃないし。そもそも服とかのお店はたくさんあります」
「そうだよね。じゃあ、電器製品や本やCDをデパートで買う?」
「......だって売っていないんじゃないですか?」
「そうだよね。でも昔はあったんだ」
「テレビとか売ってたんですか」
「そう、それなりに売り場はあったよ。本やレコードも。そう、"レコード"の時代はね。でも、ヤマダやヨドバシ、タワーやHMVなんかが出てきたら、まあかなわないよね」
「はい、わかります。実際、デパートから電器店になった店ってあるんですよね」
「そう、この流れはさらに続く。もはや家具売り場なんかも縮小していて、なくす店舗もあるだろう。一等地で場所をとりすぎる。ネットショップとの競争も激しくなる。百貨店業界の全体売上げは長い目で見るとズ~ッと低下していて破綻した企業もあるけど、まだなくならない」
「広告代理店もそういうイメージでしょうか」
「そうだね、ただちょっと違うのは、新しい"売り物"を売っていこうとしている点だ」
「それが、"マス広告以外"ってことですよね」
「そう。ただし、それはデパートが空いた売り場で"100円ショップ"を始めるようなものなんだ」
「エッ?......どういうことですか?」
(続く)