年齢は頼みもしないのに増えていく。今日で45歳になって気分はすっかり「後期中年」である。僕は個人事業主なので、仕事の決算も12月で、その直後に歳をとるから、否応無しに「来し方行く末」を振り返る。別に暗くなることもないんだろうけど、「ア~ア」という感じで、嬉しいというより、誕生日に食いたいものが食えるような健康と経済の状態にしみじみ感謝することくらいである。
料理を作ってくれる家族がいるのも、ありがたい。
仕事は独立して4回目の決算をしたことになる。会社を辞めるまでは不安で仕方なかったのだが、こうやって生きていることが未だに信じられないことがある。その割に、会社を辞めて後悔したことは一瞬もなく。それはそれで、なんだか怖い気もする。
1つだけ味わえないのは「会社をさぼって直帰する」という感覚である。今だから書くけど、僕は30歳で制作を離れてからはかなりワガママ勝手な会社員生活だったと思う。
20時以降に仕事したことは殆どない。行きたいコンサートは平日でもすべて行ったし、その後オフィスに戻らざるを得なかったのは一度だけだった。つまり18時に会社を出る、と決めたら絶対に出ていた。
最後の2~3年はかなり緩くて、15時過ぎにどこか外出して、そのまま街を歩いたり美術館に行ったりすることがよくあった。週イチとは行かなかったけど、月2~3回はそういうことをしていた。社会人は忙しいので学生の友人と遊んだり、一人で蕎麦屋で明るいうちから飲んでいた。
この「人が働いている時にサボっている」という感覚が、フリーでは味わえない。「直帰」と言っても、常に直帰だからなんだかつまらない。そういえば、決算の直前に風邪をひいたことにして、ディズニーランドへ行って、伝票処理のし忘れをしたことに気づいてジャングルクルーズ近くの公衆電話から指示したこともあった。
いま平日に遊びに行っても「その日に仕事のないおじさん」でしかない。
でも、会社をサボってはいたけれど、焦りは強かった。40歳を目の前に自分に残された時間が殆どないような気がして、じゃあ何をする時間が必要なのかはわからないけど、会社員のままではダメで、どうにかしないといけないような焦りがあった。だから、周囲の同僚や先輩にそうした「焦り」がないのが本当に不思議だった。
最初の単行本を40歳になった直後に出して、間もなく会社を辞めて、何で仕事を頂いているのか自分でもよくわからないまま、こうして歳をとる。
焦っても意味がないことだけはわかってきたが、時間が着実に減っていることは確実である。
そんなことを考えながら美術館に行って、散歩して帰ってきたら、日当たりのリビングのクッションでネコがねじれていた。とりあえず、これ以上難しいことを考えることは止めることにする。