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熟年離婚。
(2009年1月16日)
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夫は商才があり、いわゆる「目端の利く」タイプだった。
妻の実家はかなりの土地持ちだったが、その土地を活かしてビジネスができると言い出したのは夫である。当時この土地は広大でも、旧市街からは外れていた。だが、やがて人の流れが変わるのだから、ここにいろいろな商店を誘致してその賃借料だけでもかなりになるぞ、と夫は言った。
戦後人口の急増に伴って、街は拡大した。夫の読みどおり人の流れは変わった。妻の家が持つ土地に出店を望む人は後を立たない。かなり、高値に設定しても後から後から店は増える。思い切ってビルを建ててみると、これがまた満杯となった。
夫は単に場所貸しをするのではない。飲食店、物販などの店舗も時代の先をいく店を発掘していく才があった。そのため、賑わいは増し、出店希望者は増えて、土地の価値はますます上がっていった。
転機が訪れたのは90年代半ばからだろうか。街を行く人の高齢化が目について、若い人が少なくなってきた。出店希望は相変わらず多かったが、昔から営業していた店の客が減って閉店したり、なんとなく寂しくなってきた。
そして、ふと気づくと今まで人がいなかった裏道に若者が集まり始めているという。
若者たちは、いままでの一等地の街はあまりカッコいいと思わなくなっているようだ。それよりも裏道にできた小さな店で、店主とやり取りしたり、場合によっては注文を聞いてもらえるような時間を楽しむようになっていた。
そのうち、段々と店じまいが増えてくると夫婦の間にも焦りが出てきた。

裏通りだと思って侮っていたエリアが想像以上に賑わっている。裏通りの店は路上にはみ出したりとか奔放な店も多かったので、夫は警察を動かして取締りを働きかけた。だが、それで自分たちの開発したエリアに若者が来るわけでもない。
裏通りの店の幾つかに働きかけて、ともに集客できるようなキャンペーンも行ったが思うようには動かない。そして、空いた店舗に入ろうとする人は減って、かつて栄華を誇ったビルも寂しさが増す一方である。
妻は思った。土地を活かすのなら、何もアクセクする必要はない。テナントビルでの商売は辞めて、マンションでも建てれば老後は悠々自適ではないか。大体、夫は裏通りの方で商売をしようと必死だが、もう私の家のことには興味がないのだろう。
それなら、そうすればいい。だが、土地は私のもの。
夫は、自ら土地を持っているわけではない。だから、商売を続けたければ、妻を頼らないすべを考えなくてはいけない。裏通りで繁昌している店の若い女性オーナーの顔が浮かぶ。彼女なら、いいビジネスパートナーになれるかも。
別居を切り出しのはどちらからだったか......お互い似たような気持ちになっていたことに気づいた。
「そう、いい時代だったね」
「仕方ないわ。時代が変わったのよ」
いきなり離婚というわけにも行かないが、まずはそれぞれが自立できるのか、やってみようと言うことになった。夫は妻の土地でのビジネスは続けるが、新しいエリアでの挑戦をしている。だが、裏通りの世界はライバルも多い。
妻は時折夫の商才を頼りたくなる。自分でカネを稼いだ経験があるわけでもないので時折不安になる。
そんな折、米国発の不況が日本を襲った。逆風の中で2人の不安は高まるばかりである。
そんなお話。
夫と妻の関係が、総合広告代理店とテレビ局の関係に似ていると思ったら、それは単なる偶然である。


コメント(2)
[ hk ] | 2009年1月16日 20:25

いつも楽しく拝見しております。
興味深いものばかりで、何回も読み直してます。

単なる偶然ですが、途中から私も感じました(笑)

夫=総合広告代理店
妻=テレビ局

土地=電波or番組?
テナント=CM枠
出店者=広告主
裏通り=インターネット
裏通りの店=ネット企業
注文を聞いてもらえるような時間=インタラクティブ
マンション=コンシューマービジネス(DVDとか映画)

みたいな感じで。短絡的ですが。

電波と番組とCMの振り分けに迷いました。


[ Author Profile Page 山本直人からhkへの返信 ] | 2009年1月19日 14:34

こんにちは。どうもこの夫婦、後継者の育成ができたいないうようですね。




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