企業内のマーケティング担当者が、社内から厳しくROIを問われるようになって久しい。これは欧米でも同様らしく、MBAをとった学生は「チェックできる側」の財務系の仕事を希望して、マーケティング志望が減っているという。大学の先生に聞いた話である。
実際にマーケティング担当者から相談を受けることもある。この場合広告予算そのものに関わるので、代理店の人には話しにくい状況もあるわけで。
全般的な傾向として言うと、短期的販促については経験値も高まってきて、社内でも納得されるようになりつつある。一方ブランディングに関わるコミュニケーション費用は、それほどキッチリ説明できない。
この話を聞くと、人事採用のことを思い出す。人事は長期的な視点で採用するが、現場は即戦力を求める。しかし、即戦力は「今がピーク」の可能性もある。
「どうしてああいう採用なのか」と問われた経験は人事担当者は持っているだろう。しかし、あえてハンパな反論はしない。それはプロの判断でありあえて計測はしないからだ。
人材ROI、という発想もあったようだが定着はしていない。
経営者というのはこのようにROI的な判断では限界のある事柄についても意思決定をしている。
それは有体にいえば「博打」であり、スマートに言えば「資源の傾斜配分に関わる意思決定」だ。
問題になるのは「問い詰める文化」が蔓延している企業である。何でもかんでもROI的に問い詰めるのが上手な人が重宝がられて出世してしまうと、その企業は結局縮小均衡に陥ってしまうことがある。経営判断の前段階で「失敗はないが成長もない」プランしか並ばないからだ。
当然マーケターは身動きもできない。こうした「「問い詰め上手」が幅を効かせないようにするのも、また経営の大切な技術である。
説明責任という言葉が独り歩きして、「問い詰める」ことが正義だと思い込む。もっともそれは会社内だけの問題ではないかもしれないが。