ドボルザークのチェロ協奏曲は難しいのだろう、とつくづく思う。生演奏で「楽譜通り」に演奏されたものを聴いた記憶がない。どうしても音程が荒れて、無傷にはならない。
かつ、チェロの音もディスクで聴くようにクッキリとは出てこないことが多い。
12日にサントリーホールで聴いた、ヨーヨーマとヤンソンス=バイエルン放送響のコンサートでもその印象は残った。ただし、それは第一楽章の提示部までだったのだけど。
2楽章の後半からグングンとチェロの音が伸びてきて、フィナーレではオケの分厚いサウンドとともに幸せな気分になれる。ここでのアンコールは、なんとバイエルンの主席とのデュオ。その後、ソロで一曲。
後半のワーグナープロは、タンホイザー序曲と神々の黄昏、そしてワルキューレの騎行。こういう「名曲コンサート」的なプログラムなのだけど、緊張感が持続するところが凄い。
バイエルンはヤンソンスとのコンビで聞くのは3回目だけど、一部の奏者が若返っているようで、以前スタミナ不足を感じたトランペットもキラキラ感抜群。木管とホルンはドボルザークのチェロとのハーモニーが至福。
ヤンソンスという人は不思議で、決して奇を衒うことがないのに、満足感が深い。譜面台をおいて、高い打点で振るので派手さはないけれど、オケとのコミュニケーションはこの方がいいのだろう。このアクションだと、管楽器のいわゆる「ひな壇」が低めに設定できるので、それがサウンドの一体感に寄与しているのかもしれない。
アンコールは予想通りのローエングリンの三幕だったが、驚いたのはヨーヨーマの再登場。コンサートマスターの席に座って、ハイドンの「セレナード」を、チェロのソロでアレンジ。
名シェフのレストランに、東洋の名匠が来た「コラボレーション」の一夜という感じだろうか。前半のオリエンタル風味の後で、メインはお約束のこってり料理。しかし、まさかその名匠がパティシエとして出てくるとは。
客席は熱狂。というか「大喜び」といった風情だろうか。1月に聴いたランランもそうだけど、表情に西洋人と異なる潤いがあって、それが客席にも伝播する。
そういえば今年はまだユディ・リが残っているのであった。