2010年10月アーカイブ

ヴッパータール交響楽団演奏会 
指揮:上岡敏之 
10月18日 19時 サントリーホール
モーツアルト 交響曲第28番 ハ長調 K.200
マーラー   交響曲第5番 嬰ハ短調
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いろいろと評判の指揮者だったのだが、たまたま聞く機会に恵まれた。
最初のモーツアルトでまず棒さばきに目が行った。細かく拍を刻まずに、オーケストラと歌うようなスタート。時折、弦楽器のハーモニーが、思わぬ厚みを見せる。また木管やホルンの響きも、劇的でかつ美しい。ここまで聞いた印象では「自然な音楽をつくる指揮者」というイメージで、後半が楽しみになる。
ところがマーラーは全く想像しなかった音楽だった。
表面的な面でいうと、テンポの緩急が意外なところで動く。また、低弦や内声の強調、ピッツカートなどのアクセントなどが大きなアクションとともにいやでも目立つ。
そして、マーラーの混沌とした思念をぶつけているかというと、フィナーレを聞き終わった時には、比較的爽快な印象が残る。コンサートとしてはとてもいい体験だったのだけれど、後から思い出すと「どうしてああしたいのか」が何だかスッキリしない面もある。
とはいえ、彼の指揮をまた聞きたいか?というと「聞きたい」と迷わず答える。つまり気になるのである。
指揮者をシェフにたとえるのであれば、彼はあえて肉の内臓まで使った料理が得意なタイプなのだろう。

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