『数学的に話す技術・書く技術』という本を書いた理由。
(2021年10月25日)

カテゴリ:雑記

新しい本を出した。数学の本だ。まさか自分でもそんな本を出そうとは思ってもいなかったが、これは共著だ。そうじゃなくては、高校2年で数学を「終了」した者が40年経って書くわけもない。ああ、40年か。いや、そこで感慨に浸ってる場合でもないので、ちょっと解説をしておこうと思う。

共著者の曽布川君は、大学の同期である。ワグネル・ソサィエティ・オーケストラという音楽団体でいっしょに演奏をしていた。卒業してからはまったく会っていなかったのだが、アバドが他界したのがきっかけで再会したのが2014年。なんと「早稲田に来る」という。そして、その後も会って話すうちに「これからのビジネスって数学わからないとヤバくない?」と私が言い出し「だから、いま早稲田で文系にも数学教えてるんだよ」と彼が言ったあたりから、話が盛り上がって「じゃあ、本を書くか」という話になって、まあ時間はかかったけれども出版に至った。

僕の役割は2つだった。1つはビジネスの現場で「どれだけ数学的思考が大切か」ということを明らかにすること。もう1つは、文系代表として「数学を学んだ際のモヤモヤ」をあらためて書いてみることだ。

前者については数学スキルだけではなく、論理的思考の重要性も強調した。「数学嫌いの文系経営者」がいるのは仕方ないかもしれないけど、そういう人が論理そのものを疎んじた結果、けっこう大変なことになったケースはいろいろとあるのだ。

後者については「数列」「対数」「微分積分」など高校2年の教科書に立ち戻って、学び直して書いてみた。だから、まずは現在の教科書を買いに行くところから始めることになった。

というわけで、いろいろと曲折はありながらも、ようやく脱稿したのが今年の春。ただ、数式やグラフなどもいろいろ多い本なのでそこからが結構時間がかかって、発売になった。

僕たちは普段意識していないけれど、現在の生活がスムーズにおこなえているのは根底に数学的思考とそれに基づいてさまざまなことが成立しているからだ。

こうやってパソコンに向かい文章を書き、暑くも寒くもない部屋にいて、のどが渇けば冷蔵から飲み物を出し、出かけようと思えば歩くよりも遥かにスムーズな手段を選択できる。どれ1つとっても、科学の恩恵を受けているし、その根っこには数学がある。

なんだ、じゃあ文系はそうやって築かれた世界の中で何やってんだろ?と思ったりもした。ただし、それも数学のことをいろいろ知ったからだと思うし、文系の役割を改めて考えるきっかけになった。

いろいろと得難い体験だったし、ぜひ一読して「数の世界」に改めて浸っていただければと思う。
うちの猫も、一応推薦しているようだし。