2016年02月アーカイブ

「事実上のミサイル」が発射された。

ではミサイルとロケットの違いって何なんだ?という話を今回はネット上でも結構見た。諸外国がどう言ってるのかを含めて、こちらの記事に書いてあるが、そもそも国連がミサイルと言い切っているようだ。

英語圏のメディアを少し調べたが、ニューヨークタイムズは「大陸間弾道弾開発プログラムの一部と西側専門家が信じているロケット」という言い回しで、CNNは’missile’と引用符付きで報じている。この辺りが「事実上」のニュアンスに近いのかもしれない。

しかし、考えてみると「事実上」という日本語も妙だ。調べてみると「法律上」の対義語ともあるが、この場合は違う。

どちらかというと「ご承知の通り」という感じだろうか。

ただ、事実というのは「表」の話だ。だからこそ、真実や真相というのが「裏」となっている。しかし、今回は表がロケットで、裏がミサイルという感じだ。

つまり、どこかで裏と表が逆転したというか、最初から裏も表も透けてしまっているわけなんだろう。

考えてみると、今年に入ってからのニュースってこんな感じだ。

「人気タレントの不倫発覚スクープ、事実上の近親者による暴露がおこなわれました」

だとすれば、もちろんあれだって。

「人気男性アイドルグループの謝罪会見、事実上の脱退阻止の経緯説明がおこなわれました」 >> 「事実上」って、何なんだろう?の続きを読む



ライフネット生命のCMが流れていて、アレ?と思った。「ネット保険なのに、電話で相談!?」というというタイトルで、契約者が登場している。調べてみると、他にもあって「ネットだから、いろいろ不安?」というようなCMもある。すべて、契約者が話すという設定で、グループインタビューを映しているような感じだ。

ライフネットと言えば、社名の通りネットに特化して、その強みを最大に活かしてきた。一方で、いまのキャンペーンはある意味で「ネットの否定」である。電話で相談できたり、「あたたかい」という価値訴求は、むしろ国内の大手生保に近い。

このCMは既に昨秋からオンエアしていたようなので、路線変更をしたのだろう。

ライフネットの戦略的はとても明快だった。3Cのお手本みたいなもので、ネットに特化して、競合とは価格面で差別化を図り、顧客は20から30代の都市在住者。かつてのCMなどは、その辺りがわかりやすかったので大学の講義などでも題材にしていた。

ペルソナの設定を丁寧におこなった上でのマーケティングだったと推測する。

その後、競争の激化で新規契約が伸び悩み、KDDIと資本提携をおこなった。この辺りの経緯は、この記事(東洋経済オンライン)などに詳しい。

いろいろと分析記事を見ると、価格優位性が薄れたり、対面型販売への根強い人気など、おもに競合との関係で優位が保てなかったという。その通りだとは思うのだけど、僕が気になるのはライフネットは「顧客からの共感」を高めに見積もり過ぎたのではないか?ということだ。

より合理的な選択を志向する企業姿勢へ共感してくれる人々。それがライフネットの描いた顧客像だったと思う。以前は、価格訴求をする際に「余計な営業コストがかかっていない」ことを訴求して、保険料の内訳を公表した。

もちろん、その姿勢に共感した人も多かったと思うけれども、さて、それは生保の会社選びで強い動機になるんだろうか。 >> ライフネット生命はアタマが良すぎたのか?の続きを読む



IMG_1368立春を過ぎたが、旧暦の新年は明日だ。。つまり北朝鮮は、中国にとっての大晦日にロケット花火をぶっ放したわけで、そう考えると相当のあてつけのようにも思える。

ちなみに今年のような場合は「年内立春」というのだが、それが特段珍しいわけではない。年の初め、つまり旧暦睦月は月の満ち欠けで決まる。明日は新月だ。一方で二十四節季は1年を24に分けるので太陽の動きによっている。立春の次は19日が「雨水」となる。雪が雨に変わり、氷が水になる頃合いという意味だ。

音楽の世界でも季節を描いたものは多いが、春はどこか浮かれている。冬だとシューベルトの「冬の旅」が圧倒的に存在感があるが、あれを寒い時に聴くとそれだけで凍えてしまうので、夏の夕暮れくらいがちょうどいいように思う。

というわけで、今日は春の音楽について。

ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番は「春」というタイトルだ。初めてこのメロディを聴かせた人に「ある季節のタイトルがついてます」とクイズを出したら、まずほとんどの人は「春」と答えるのではないだろうか。

この曲の冒頭の流れるようなメロディは、「春の小川」の風景をどこか連想させる。雪解け水が流れる穏やかな風景だろう。

あまりしっかりと弾き込んだ演奏よりも、名人がサラリと奏でたディスクの方がいい。能天気といわれるくらいの頃合いで、ひたすら美しいパールマンや、自在なフランチェスカッティなどが気持ちいい。後者の場合、自在なのはピアノのカザドシュではないかという気もするが。

シューマンの交響曲第1番も「春」だ。ただし、これは季節の春が来たというよりも、自分の中に春が来たような音楽だ。シューマンは相当に精神が不安定だったというけれど、まあ何か浮かれていたのだろう。 >> 【音の話】立春なので、春の曲三題。の続きを読む



(2016年2月6日)

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H2802_noh_omote国立能楽堂 特別公演

2016年1月31日(日)13:00 国立能楽堂

能・金剛流 「鱗形」

狂言・大蔵流 「舟船」

能・観世流 「唐船」

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昨秋から能を観に行くようになったのだが、とても評することができるほど回を重ねていない。もちろん巧拙を語ることはできないのだが、ぼちぼちと感想などを書いていこうかと思う。

(以下演目についての説明などは国立能楽堂発行のプログラムの389掲載の村上湛氏の解説を参照している)

この日の特別公演は海や船にちなんだ演目だった。「鱗形」は北条時政が紋所を定めるために、江ノ島の弁財天に参詣する場面から始まる。

「舟船」は主従が渡し場で舟を呼ぶ時のやり取りが主となる。

さて、この日の主演目は「唐船」だった。シテは武田志房、ワキは福王和幸。演じられるのは珍しいようで、観るのはもちろん初めてだ。解説によると、潜在的な人気が高い割に上演されない理由は、4人もの子方役を揃える必要があるからだという。しかも謡も多いので、能力の高さも要求されるらしい。

そうか、児童合唱が必要なマーラーの第三交響曲みたいなものなのか?と思ったら全く違った。 >> 4人の子方が光る「唐船」。の続きを読む



少し前のウォール・ストリート・ジャーナルが、米国の若い大卒者の収入が急増という記事を出していた。ニューヨーク地区連銀のレポートである。

景気後退時は「大学を卒業してもコーヒーショップで働くしかない」と記事にあるように、そのイメージが変化して、学位を持たない労働者との格差が拡大したということだ。

この記事で興味深いのは専攻分野別の収入に関する記事だ。上位10位のうち8つは技術系で、化学エンジニアが年収7万ドル(中央値)でトップだという。

エンジニア優位だというのは検討がつくが、その逆はどうか。記事で「収入が少ない専攻分野の一部は失業率も最も高かった」ということで、挙げられているのが人類学、マスメディア、環境研究の3分野だ。

元のデータを見ても、この3つは失業率も高いし、収入も30,000ドルくらいだ。人類学の働き口は少なそうだし、環境研究はまだこれからの分野なのだろうが、マスメディア専攻というのは時代から逸れているのだろうか。これは「マスメディア従事者」ではなく、「マスメディア専攻」の収入とは言え、なんだか象徴的だ。一方でジャーナリズム専攻の失業率は低いので、この辺りは実際にどんな職種についているかまで見ていかないと何とも言えない。

(出典のデータはこちらのページ

これを見て思ったのだが、これからは日本でも「何を学ぶか」が本当に大切になってくると思う。 >> 米国の学部格差~文系も「エンジニア」になるべきなのか?の続きを読む