2017年04月アーカイブ

自伝は、割り引いて読んでしまう。もう、失うものがないような人ならともかく、まだ社会の一線にいる人なんだから、「知ってほしい」ことを書く。とはいえ、いいことばかり書いていたらただの自慢話で、誰も読んでくれない。

というわけで、ある程度予定調和になることが多く、「私の履歴書」などにはある種のパターンがある。だからこそ、ニトリの社長の時は結構驚いたけど。

とはいうものの、フレデリック・フォーサイス『アウトサイダー 陰謀の中の人生』(KADOKAWA)は、想像以上におもしろかった。

初めて彼の作品に触れたのは『悪魔の選択』だったと思う。1979年だから、高校に入った年だったのか。そこから『ジャッカルの日』に戻り、当時出版されている本はすべて読んだ。知らない世界を垣間見る楽しさとスリルが本当に面白かった。

この自伝を読んで一番感じるのは、フォーサイスの現場主義だ。彼の小説の基盤は、ジャーナリストとしての活動にあることがよくわかる。しかし、それ以上の面白いのは、生き方そのものだろう。

高校で優秀な成績をおさめてケンブリッジへの入学機会もあったのに「パイロットになりたい」ということで空軍に入る。ところが士官学校を出ていなければ、乗れる飛行機は限られるということで、新聞の世界に身を投じ、やがてロイターへ。 >> 自伝の楽しさ~フォーサイスと蔡英文。の続きを読む