2017年07月アーカイブ

直木賞が発表された。今年はたまたまだけど、事前に候補作を2作読んでいた。

以前に書いた『会津執権の栄誉』と、もう一冊は宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』(角川書店)だ。

中央アジアのアラルスタンという国を舞台に、少女たちが活躍するエンタテインメント。冒険小説でもあり青春小説の香りもするけれど、そういう枠には入らない。やっぱり「エンタテインメント」としかいいようがない。

宮内悠介氏はSFというイメージが強いが、近著の『スペース金融道』は、「宇宙を舞台にした消費者金融」という設定で全体のトーンは軽い。とはいえ、設定がしっかりして、構成も凝っている。

この小説も、まず「アラルスタン」という設定がおもしろい。架空の国なんだけど、地図が書かれていてウズベキスタンやカザフスタンの近くのようだ。で、このアラルスタン。気づく方は気づくかもしれないが、「アラル海」の地に生まれた国なのだ。

実際のアラル海について、調べていただければわかるだろうが、かつては広大な内海だった。それが、旧ソ連の灌漑で干上がってしまう。

実際は塩を含んだ地で荒れているのだが、小説上はその地に国家が生まれている。しかし、そこには当然ながら「仕掛け」があり小説全体に影響する。 >> 直木賞残念!でも『あとは野となれ大和撫子』は楽しいよ【書評】の続きを読む