2018年10月アーカイブ

多くの著名人が大病を告白し、そのプロセスを語ることも多くなった。難しいこともあるだろうけれども、意味はあると思う。

病は、孤独だ。本人はもちろん、家族にとってもそうだ。見知らぬ人のできごとでも、「そういう人がいるんだ」という事実は、力になる。それは実感としても経験がある。

そして、棋士の先崎学九段が書いた『うつ病九段』は、そうした数ある「闘病記」の中でも、とてもとても価値がある本だと感じた。

自らの経験を「客観的に記述する」ことはそもそも難しく、病であればなおさらだし、うつ病であれば想像もつかない壁があるだろう。

だから、ここには彼の経験のすべてがあると期待したわけではない。それでも、発病から快復に至る過程には静かな感動がある。

それは決して劇的なストーリーではない。ミサのような静かな宗教曲を、ジーッと聞いてるうちに、気づいたら曇り空に陽が射していた――そんな感覚になる一冊だ。

よく言われるが、うつ病になる可能性は誰にでもある。しかし、自分の中にもまだまだ大きな誤解があったんだなと思った。

うつ病は「だいたいいまだに心の病気といわれている。うつ病は完全に脳の病気なのに」と語られる。この話は、終盤になって精神科医である、実兄の言葉だ。 >> 『うつ病九段』は、すべての人に希望を届けてくれる。の続きを読む