2016年10月アーカイブ

91ykt5b3ahl先日、過労による自死の事件を受けて、こんな記事を書いた。その際に紹介した本が気になった方が多いようだったので改めて内容について書いておこうと思う。

『その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺稀少地域」を行く』(青土社)は、精神科医の森川すいめい氏によって書かれた本だ。スタイルとしてはある種のノンフィクションと言っていいだろう。

このタイトルで、まず気になるのが「自殺稀少地域」という言葉だ。そういうエリアがあるのか?と思う方も多いだろう。

自殺率については、都道府県による差があることは知られている。ただし「稀少地域」という視点は新鮮だ。これは、岡檀氏の「生き心地の良い町」(講談社)による研究で注目を浴びた。これは徳島県の旧海部町(現在は海陽町)というエリアの自殺率の低さに着目して、その特徴を他地域と比較研究した本だ。

この本は4年間の現地調査をもとにしており、アカデミックな世界でも評価された。一方で森川氏の本は、旧海部町の他にも幾つかの自殺稀少地域を歩いているが、体験をもとにしたエッセイ風の仕立てになっている。

こう書くと印象中心のように感じられるかもしれないが、岡氏の著作と併読することで、森川氏の観察眼の確かさが浮かび上がってくる。

そういう意味で、この2冊をセットで読むことで「自殺稀少」への手掛かりがより理解できると思う。 >> 「自殺稀少地域」の研究は、職場でもヒントになると思う。「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」の続きを読む