2018年05月アーカイブ

皆が関心を持っているようで、実は関心を持ち続ける人は少ない。それが「雇用」にまつわる話だ。

じゃあ、どう言う時に関心を持つのかというと「就職が厳しい」とか「仕事を失う」というような時だけ、注目される。10年ほど前の金融危機の時も大騒ぎだった。そして、最近だと「AIで仕事がなくなる」というテーマは関心を惹く。でも、まずは自分の職種を探して「ああ、そうか」と焦ったり安心して、そのままになる。

で、この本はそうした話をきちんと分析して、ちゃんと見通してくれる。やっと多面的な視点からのいい本が出て来たなと思う。著者は、人事・雇用については第一線のプロフェッショナルだ。

まず、野村総研やマッキンゼー、そしてオックスフォードのフレイ&オズボーンの「予測」についてバッサリと斬っている。代替可能性だけに注目してコストを考慮していない、などという論点を研究者とともに明快に説明してくれる。

ただ、それだけではなくて現場に根ざした議論が続くのがとてもいい。しかも、それは「普通の仕事」の未来だ。いわゆる営業職や事務職、そして回転寿司の現場まで、さまざま現場の実情からAIの可能性と限界を考える。

そして、日本固有の事情、つまり人口や就労構造を踏まえた上でこれからの見通しを見ていく。それも「15年」と限定しているので、地に足のついた話を知ることができる。外国人労働者の雇用をめぐる話など、日本における状況をちゃんと見ているわけで、実はそうした議論をまとめて論じたものはなかなかなかった。

というのも「仕事とAI」をめぐる議論は、どうしても気宇壮大になる。それは、「仕事がなくなる」というレベルではなく、「機会が仕事をする未来」に人間が生きている意味を問われるからだ。 >> 地に足のついたリアル~「AIで仕事がなくなる」論のウソ【書評】の続きを読む



人にとっての、年齢の「節目」はどこにあるのか。

大体の人は、30とか40とかキリのいい数字を思い出すかもしれないし、十進法の呪縛みたいなものとしては、そんな感じだろうか。年男・年女とかもあるけど、まあ10歳刻みなんだろうな。

そんな中で、最近気になるのが「50歳」という節目だ。連載していた記事の関係もあるんだけど、自分自身はもうとっくに超えていて、来年には半ばとなる、

一方で、40代の人との違いも意識するんだけど、それは当人同士の違いというより「親の年の違い」が大きいんじゃないかと感じるようになった。

たとえば、固定電話やファクシミリがまだそれなりに健在だったり、現金主義だったりするのを、「電子化すればいいだろ」と思うのは僕もよくわかる。実際に、自分でそれほど使うわけではない。

ただし、80を超える自分の親世代のことを思い起こすと「そうは言ってもな」という感覚になる。パソコンや携帯も使っているようでいて、どこかに「壁」があるのだ。この辺りの感覚などは、40代の人だとちょっと違うかもしれない。

もっと、大きな差は「親を送ったかどうか」ではないだろうか。同世代と話すと、既にどちらかの親を亡くしているいる人が多い。既婚者で「それぞれの親4人が元気」ということは稀だ。僕の場合は、48歳で父を送っている。

この経験は、大きい。「次は自分の番」であることを否応なく突きつけられる。そして、残った親の老いを目の当たりにしながら、答えのない自問をする。 >> 40代と50代の違いは、「親の年齢の違い」なのだとも思う。の続きを読む



昨秋、萩に行った。細かく書くと、出雲から温泉津に回り、津和野から萩へ。その後山口市から、宇部へ抜けて帰ってきた。

天候に恵まれて楽しく過ごしたのだが、萩の町ではやっぱり「萩焼」が気になる。

焼き物にとりわけ関心があるわけでもないのだけれど、ついつい買ってしまうことも多い。西の方では、以前出雲の出西窯の工房に行った。そうだ、その頃はちょうど出雲大社が葺き替えだったので、今回はちょっとしたリターンマッチでもあったのだ。

ただし、何といっても萩焼だ。あちらこちらに店がある。良し悪しはわからないけど、まず城など観光の中心にあるような店で何となく相場をつかむ。ただし、ズラ~ッと並んでいるのを見るほど、どうすればいか分からない。

というわけで、今度は街なかを丁寧に歩いてみる。萩は昔ながらの街並みが残っていてそれが観光資源になっている。萩焼の店もあるのだけれど、今度はいろんな意味で手が出しにくい。

有名な先生の「作品」になってくるので、価格も高い。高くても自分の目に自信があればいいけれど、皆目見当もつかない。しゃれた店もあって、デザイン的にも大胆なものも扱われていて、なぜか、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」が店内に響いている。やはり、退散した方がいいような気になってしまう。

もうあきらめようかと思っていたのだが、前日クルマを走らせながら裏道の店を幾つか頭に入れていたので、そこを回っていくと「オッ?」と思う店があった。どことなく、佇まいが凛としている。とある窯の店なので、いろいろ並べている所とは空気感が違う。 >> 萩焼の茶碗、しかも「鬼萩」のご飯はおいしいよ。の続きを読む



サッカーの本田圭佑選手がNHKの「プロフェッショナル」で語った言葉が話題になっている。人によっては、話題というより「問題」だと思うようで、「ハリルのやるサッカーに全て服従して選ばれていく」ことを否定した発言が引っかかったようだ。

「監督のいうことに従うだけでなく」と言えば、それはトップクラスの選手の普通の考えかもしれない。ただ、「服従」って、普段使うかな?

本田の言葉選びのセンスというよりも、ある種の本音が出たのかもしれない。ただ僕は本田の発言よりも、別の人の言葉にずっとモヤモヤしていたのだけれど、今回の「服従」の一件でなんかいろんなことがわかってきた感じもする。

それはサッカー協会の田嶋幸三会長の「解任発表会見」の言葉だ。

「選手とのコミュニケーション、信頼関係が薄らいできた」という発言を聞いて、ずっと「この人は大丈夫だろうか」と思っていたのだ。

今回改めて分かったんだけど、田嶋氏は「コミュニケーション」という言葉の意味をよくわからず、しかも本人がコミュニケーションをきちんとしていなかったんじゃないか。

コミュニケーションという言葉は、カタカナのまま使われている。それには理由があって、「伝達」だとニュアンスが違う。 >> やっぱりJFA田嶋会長の「コミュニケーション」は謎。の続きを読む



先日、自宅のポストに「タウンページ」が入っていた。毎年、頼まなくても配られる。使わないので、すぐに古紙回収に出すのだけれど、ちょっと気になったので開いてみた。

必要があれば、とりあえずネットで検索するのが日常なのだが、あらためて業種別に見ると味わい深い。

住んでいる区が対象なので、1カテゴリーに1件というのも結構ある。たとえば、「しいたけ」は、1件。「金網」も、「黒板」も、そして「刀剣研磨業」も1件ずつある。その一方で、「こうじ(麹)」は2件もあるではないか。

そして、「彫刻家」が1件掲載されている。電話して「彫ってください」と頼む人がいるか。いろいろと、妄想は尽きない。「軍払い下げ品」も1件掲載されているが、これは思わず調べてしまった。

あと、「中華料理」と「中国料理」は分けられていて、後者の方が本格のようだけど基準はどうなってるんだろ。

などと頁を繰って、最後に「ロープ」と「和装小物」が1件ずつあるのを確認して、「やっぱり回収に出すか」というところで、毎年の疑問を思い起こす。

「これ、いらないんだけど、断れないのか?」 >> 古紙回収直行のタウンページだけど、広告市場は300億もあるんだ。の続きを読む