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フジテレビと民放業績についての記事だが、とりあえずデータ分析は最終回。
今日見ていただきたいのは、在京各局の年間視聴率(プライムタイム)を2004年と2010年で比較したものである。データの出所は、TBSのホームページだ。
まず一見するとわかるように、すべての局が視聴率を減少させている。6局合計が72.2→63.2だ。ゴールデンでも同じ傾向で全日はもっと厳しい(詳しくはこちらの下の方)。
で、もっとも派手なのはTBSで12.9→9.9と3ポイント減少。その逆がテレビ朝日で12.3→12.0と0.3ポイントに留まっている。
フジテレビは14→12.6だが、2004年から7年連続でいわゆる「三冠王」である。
ただし、この三冠も決して安泰ではない。それはまず、全体の視聴率が減少していること。それに加えて、他局が追い上げているということである。
そのことをわかりやすく見るのであれば、「6局内シェア」がいいのではないかと思って分析すると面白い風景が見えてくる。

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まず目立つのはTBSの減少である。テレビ東京も厳しい。そしてシェアを伸ばしているのがテレビ朝日。そしてNTVだ。つまり総視聴率減少の中で、踏みとどまっていることがわかる。特にシェアで見ると、上位3局は1ポイントの中にひしめいており、「3強」ということだ。
もっとも、これが売り上げに反映されないことも事実だ。セールスの現場でフジテレビの人気はまだまだあるわけだが、ジンワリと構図は変化している。かつては明らかに1馬身以上離していたけれど、半馬身から首の差にひしめいているのが今の視聴率競争の状況だ。
ここまでの数字を見てみると、フジテレビの課題は「民放全体の課題」であり「トップ企業ならではの課題」ということがわかる。

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というわけで、民放各局が営業利益を確保するために制作費を削減せざるを得ない構造がわかるわけだが、実際に10年度と前年度との営業利益の伸びと、制作費の増減を単純に比べてみておくこう。
営業利益を伸ばすためにはもちろん制作費削減以外の手だてもあるので、この表自体はいささか乱暴だとは思っている。ただし、制作費削減が利益に直結しやすいことは確認できるだろう。
さて、制作費削減は視聴者離れ、つまり自社の価値低下というリスクを孕むわけなのにどうして利益が重要か。上場企業だから、と言えばそうなんだけれど、ここには別の側面もある。
設備投資だ。
決算説明資料を見ると、テレビ東京以外は設備投資額を記している。2010年度実績と、11年度の見込みをグラフ化してみるとまた、いろいろなことが見えてくる。
まずテレビ朝日の投資額が145億円と図抜けて多い。ただ決算資料には内容が書いていない。何なのかと思って有価証券報告書まであたって分かったのだが、西麻布に200億円余りで土地を取得し開発するようで、そのうち100億近くを払い込んだことが効いている。次年度も、この支払いで投資がかさんでいると思われる。
他の放送局についても、報告書を調べると大体が放送設備などへの投資である。テレビ朝日も土地取得額を除くとおそらく50億程度になるわけで、それで設備投資額を比較するとどうだろうか。

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ここでもフジテレビがアタマ一つ抜けて100億円以上の投資をしているのである。報告書には「ハイビジョン対応のためのスタジオ設備、地上波デジタル放送対応のための放送設備・機材、報道関連のネットワークを中心に」と書かれている。
どうやら他局に比しても、フジテレビは設備投資への資金を確保することを重視していることがわかる。もっとも設備投資は時間をかけておこなうので、地デジにしてもかなり遡って比較しないと一概には言えないが、投資に注力していることはたしかだろう。
つまり、フジテレビは高視聴率と広告主からの人気を背景にしたこんなサイクルを描いてきたのだろう。
「高い売上→高い利益→思い切った設備投資→より魅力的なコンテンツ」
ところが肝心の売上が頭打ちになったので、どうしたか。利益水準を確保するために制作費を削減し、設備投資を確保した構造が見える。
そして、そもそもこのサイクルには疑問もある。そもそもテレビ番組というのは「設備で作る」ものなのだろうか?

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