2010年11月アーカイブ

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏会 
指揮:マリス・ヤンソンス
アルト:アンナ・ラーソン
合唱:新国立歌劇場合唱団・TOKYO FM少年合唱団
11月21日 18時 ミューザ川崎シンフォニーホール
マーラー:交響曲第3番 ニ短調
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結局、このブログもウィーン・フィル以来となってしまったけれども、年内にコンサートのことは書かないだろうと思う。間もなく「第九」の季節なのだけれど、あれを年末に聞くという気にならないからだ。
ネルソンス=ウィーン・フィルから三週間。師匠の振るコンセルト・ヘボウの響きを聴いて、とりあえず思いついた言葉が「亀の甲より年の功」というのは、我ながらひどいと思うのだけれど、演奏家ことに指揮者というのは「絶対年齢(経験値)」がそれなりにモノをいうのである。
ヤンソンスの指揮は、テンポ設定やバランスさらにそのアクションも含めてきわめてオーソドックスだ。ここ数年日本には、コンセルトヘボウとバイエルン放送交響楽団を交互に引き連れて、毎年やってくる。そして、僕も毎年のように聴いている。
おそらく「日本で最も心待ちにされている指揮者」なのではないだろうか。
誠実で、真っ当であるがゆえに何かの刺激を求めている人には物足りないかもしれない。また作曲者の意図を徹底して掘り下げてスコアを読むかというと、そういうわけでもない。それでも、彼の音楽を聴きたくなる理由が改めてわかった。それは、指揮者とオーケストラが音楽を奏でる場に「立ち会える」喜びに他ならない。

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ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会 
指揮:アンドリス・ネルソンス
トロンボーン:ディートマル・キューブルベック
11月1日 19時 サントリーホール
モーツアルト:交響曲第33番 変ロ長調 K.319
アンリ・トマジ:トロンボーン協奏曲
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 B178「新世界より」
アンコールについてはこちらを参照。
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新世界というのは難儀な曲であり、ウィーン・フィルとは厄介なオーケストラだと思った。
新世界をプロの生演奏で聴いて、素直に感動した経験がない。「聴かせる」という点では、かなり難儀な曲なのだと思う。ベートーヴェンが第5交響曲で編み出した「苦悩から勝利へ」というストーリーでもなく、かといってサラリと流せるわけでもない。
むしろ印象的なのはアマチュア・オーケストラの自己陶酔的な演奏が妙な感動を呼ぶことがあるくらいだ。
この日の演奏も、この曲の難儀な雰囲気がよく現れていた。随所に、というか最初から最後までウィーン・フィルらしい響きは堪能できるのだけれど、音楽に没入しきれず、どこか冷めたままエンディングを迎えてしまった感じもある、
それは、また指揮者と楽団の関係も影響しているのかもしれない。
ネルソンスは、ヤンソンスの弟子でありラトヴィアの名門「ソンス一族」という出自である。というくだらない嘘を書きたくなるほど、指揮姿はヤンソンスを髣髴とさせる。やや高めの打点、熱のこもったときの上半身の激しい揺さぶり。
ただし、その熱がオーケストラとコミュニケーションできているかというと、やや疑問が残る。彼の打点は明確のようでいて、肝心のところが「スルスル~」と抜けたようになる。結果として管楽器のアインザッツが乱れたりする。
終楽章のホルン・ソロで高いEがよれたのも、棒と無関係とはいえないように思う。つまり呼吸があっていないのだ。
そして、こうした若手の指揮者に対するウィーンフィルの振る舞いというのが、これまた厄介なのである。

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