カテゴリ[ メディアとか ]

51behgt7s2lもう、メディアというのは「残念な仕事」になってしまったのだろうか。

電通のデジタル不正からDeNAの今回の事件で、デジタル分野は大きなダメージを受けたけれども、マスメディアの信頼が上がったり、接触が回復したという感じもしない。たまたま、事件がデジタルで目立ったけれど、朝日新聞の一件などはまだ重くのしかかっていると思う。

感じるのは、「志」が低いなあ、というか「志」という概念自体が、もうないんだろうなということだ。

何でかな?と思うと、メディア産業がいろんな意味で「立派」になり過ぎたような気がする。そして、「これからはメディアだ」という時代の気分が、もうバックミラーの彼方になっていることと関係しているようにも思う。

「脱工業化」という言葉が、あった。「あった」というのは、もうそういう感覚でもないし、いまも工業だってちゃんと存在している。だから、ある時期の流行り言葉であったとは思う。

でも、その頃のメディア関係者は「本当にそういう時代になったら、どうすればいいいんだろ」とビビッていたようなところもあったと思う。

その辺りの感覚を知るには、梅棹忠夫の「情報の文明学」という一冊がいいと思う。 >> メディアの「志」を確かめるために~「情報の文明学」の続きを読む



11月になった。

振り返るにはちょっと早いかもしれないが、今年の事件や騒動などのニュースは夏までに集中していた感じがする。

気になる出来事があると、エクセルの表に書き込んでいる。それを見ていくと、いろいろな流れが何となく見えるのだ。いま見直すと7月まではミッシリしている。

年明けは、サウジとイランの断交というニュースが飛び込み、ベッキーにSMAP騒動、そして軽井沢のバス事故で、まだ新年から15日だ。この後も、甘利大臣に清原、そして乙武にショーンKとスキャンダルは続く。そして、一段落したかと思った4月に熊本の地震。

ビジネスでは東芝、シャープに三菱自動車の問題が噴出して、日産傘下になったのが5月。6月には英国のEU離脱があり、7月はダッカやニースでテロがあり相模原の施設で殺人事件と続いたが、その間に天皇陛下の退位意向のニュースもあった。

そして、いま見直すとその翌日が都知事選だ。

8月以降ももちろんいろいろなニュースがあるのだけれど、前半のドタバタに比べればおとなしい。その代わりに、延々と続いているのが東京都の「小池劇場」ということになる。 >> 平日昼間のテレビが作る「世論」。の続きを読む



大学の後期のメディア論は、いまの動向を素材にしている。

最初に簡単なスライド一枚のレポートを出して、教室で共有・講評するが、まずは「任意のメディア企業を選んで、その企業の課題と解決の方向」を書いてもらうというものだ。

まあ、問題意識やそもそものメディア接触を知ることが目的なので、画期的なアイデアを求めているわけではない。

メディア企業の定義は、マスからネットまで広い。ECなどもOKにしている。ただし、「何らかの課題」がある企業を選んでもらうので、その時期にやたらとニュースになっているような企業は指定から外す。2年前のあの新聞社や、今年だとあの広告代理店だ。

さて、今年だけど妙に「人気」だったのがフジテレビだ。比較的小規模な講義だが、やたらと多い。

視聴率低迷、というニュースを目にする機会が多く、「かつてバブル期は」というイメージも重なっているのかもしれない。実際は、2000年代のフジテレビはトップのことも多かったのだけど、そういう感じではないようだ。

ただ、フジテレビが「特に嫌い」というわけでもなく、「かつてはよく見た」わけでもない。どこか「よその国の話」のような感覚なのである。というか、そもそも「フジテレビ」というイメージを、テレビから得ているのではなさそうだ。

学生の情報ソースは殆どがネットだ。フジテレビの不調は、ネットメディアのネタになりやすく、目につくのだろう。

そこで、毎年聞いてる質問をしてみた。それは、民放局へのロイヤルティ、というか好意度を測る簡単な質問だ。 >> 局イメージの希薄化と、「テレビ欄」の関係。の続きを読む



石橋貴明のインタビュー記事を読んだ。要は近々オンエアされる期首特番が「面白いはずだから見てくれ」ということなんだろうけど、「最近のテレビ」について、一家言あるようだ。

彼によると『「こうやったらまずいな」って考えちゃうような、閉塞(へいそく)感が全てにおいてテレビをつまんなくしちゃっている気がします。』ということだ。そしてこう続ける。
『僕らの子ども時代は、例えばドリフターズさんがいて、食べ物を粗末にしてるんだけど、それで「子供に見せたくない番組ワーストワン」とかになるんだけど、そんなことはみんながちゃんと(いけないことだって)分かっていてやっていたし。でも、今は、その前の時点でロックかけられちゃう、みたいなね。』

そうか、芸人のアイデアが悪いのではなく、時代の空気が問題なのか。でも、本当にそうなんだろうか。

最近のテレビのつまらなさを語る人は、よく往年のドリフを引き合いに出す。しかし、芸人は客商売で、時代に合わせて客のニーズは変わる。そして、そういうことを一番わかっていたのは、ドリフターズのメンバーだったのではないだろうか。

志村けんの動物番組は、むしろ「子供と見たい番組」の上位だろう。いかりや長介は「踊る大捜査線」で若い人の気持ちをつかんだ。

他のメンバーも「かつてのドリフ」ではやっていけないことを一番知っていると思う。だから他者がそれをを「黄金時代」と評するのはいいけど、「あの頃のドリフはすごかったのに」と同業者が言うのはどこか失礼な気もする。

ドリフターズはずっと時代と人を見ていた。それを見ていなかったのは石橋貴明なんだろうなあ。そういうことがよくわかってしまう。

石橋のインタビューではさらに気になることもあった。 >> 「人のせいにしてはいけない」と石橋貴明は教えてくれる。の続きを読む



41xkq19hr7lヒラリーの健康問題は、相当波紋を広げるかもしれない。11日の式典での途中退場は熱中症かもしれないけど、「肺炎だった」ということが後から出てくるのが、どうにもまずい。ただでさえ「嘘つき」のラベルがついて回るだけに、これは波紋を広げるだろう。

ただし、トランプも下手な攻撃をすると、また自爆するかもしれない。いずれにしても、史上稀に見る、というかついに米国大統領選挙もここまで来たかと、もう感慨深いくらいだ。

とはいえ、米国大統領選は、まさに「生きたケーススタディ」だ。政治学の選挙研究はもちろん、社会学的に切り口は多い。そして、メディアの仕事をしているものにとっては、貴重なケースの宝庫だ。

大統領選を扱った本は山ほどあるけれど、もしメディアやコミュニケーション、広告などの仕事をしているのならば、この「中傷と陰謀 アメリカ大統領選狂騒史」はぜひ読んでおくといいと思う。大統領選をキャンペーンの歴史から追っているのだけれど、それはまさにメディアの歴史そのものだし、もちろん「いま」を読み解くこともできる。

単に過去を書いているのではなく、理論的な背景も説明してあるので、「コミュニケーション論」の入門にもなり、米国の社会や政治も見えてくるのだ。 >> 大統領選挙はメディア論ケースの宝庫。『中傷と陰謀』の続きを読む