平日昼間のテレビが作る「世論」。
(2016年11月1日)

カテゴリ:メディアとか

11月になった。

振り返るにはちょっと早いかもしれないが、今年の事件や騒動などのニュースは夏までに集中していた感じがする。

気になる出来事があると、エクセルの表に書き込んでいる。それを見ていくと、いろいろな流れが何となく見えるのだ。いま見直すと7月まではミッシリしている。

年明けは、サウジとイランの断交というニュースが飛び込み、ベッキーにSMAP騒動、そして軽井沢のバス事故で、まだ新年から15日だ。この後も、甘利大臣に清原、そして乙武にショーンKとスキャンダルは続く。そして、一段落したかと思った4月に熊本の地震。

ビジネスでは東芝、シャープに三菱自動車の問題が噴出して、日産傘下になったのが5月。6月には英国のEU離脱があり、7月はダッカやニースでテロがあり相模原の施設で殺人事件と続いたが、その間に天皇陛下の退位意向のニュースもあった。

そして、いま見直すとその翌日が都知事選だ。

8月以降ももちろんいろいろなニュースがあるのだけれど、前半のドタバタに比べればおとなしい。その代わりに、延々と続いているのが東京都の「小池劇場」ということになる。

豊洲と五輪をめぐるニュースだけれど、いったいどこで「世論」のようなものの流れが決まっているのか、いま一つわからなかった。僕は基本的には新聞のネットサイトでニュースを見ていて、テレビは朝のBS1のワールドニュースくらいだ。

ただ、普通のビジネスパーソンと違うのは、日中に家にいることも結構ある。昼や夜の食事も、自分で作って手を動かすので、とりあえずテレビをつける。

驚くのは、都政に関するニュースが日中のテレビで相当のシェアを持っていることだ。また昼前から午後にかけて近くのジムに行くこともあって、僕はエアロバイクをこぎながらキンドルで読んでいることが多い。ただ、近くのトレッドミルなどのマシンのテレビを見ると、都政がらみのニュースだ。

芸能人は結婚などの報告を報道各社へのファクシミリやブログで済ませるようになって、テレビに出てくるのは脇の甘い連中のスキャンダルだ。それのネタが切れれば、都政は恰好のニュースなんだろう。

昼間のテレビを見ているのはシニアが中心だ。僕は休みに働き、平日に休んだりしてるから、彼らの生活パターンと一致することもある。ジムの更衣室や近所の居酒屋の話を聞けば、小池人気と森の嫌われぶりがリアルにわかる。

視聴率は高くなくても、日中のテレビがジワジワと世論を作っていくのだろうが、これが危うい。テレビは高齢者に受けてわかりやすいような作りにしていくから、怪しげなコンサルタントやエコノミストが言っていることが前提になったりする。

そして、地方に住んでる高齢の親戚や、軽井沢の定食屋の主人の方が僕よりも都政の現状については妙に詳しかったりする。日中の番組編成からすると、東京の話がそのまま全国ニュースになりやすく、場合によっては国政にも響く。

これは、舛添知事の騒動の時もそうだったけど、複雑なニュースをを冷静に分析するのは、本来新聞の役目じゃないかと思うが、後追いになっていると感じる。ネットの一部がきちんとしたことを書いているが、まだまだ届いてないところも多い。もはや都政という劇場は客席と舞台が混然一体となって、怒号の飛び交うような場になっているのだろう。

「平日・昼間のテレビ」という多くの働く人が知らない場で、ジワジワと世論が作られていく。しかし、それで決まった内容で使われるのは、働く人の税金だ。 日中のテレビをなめてはいけない、とつくづく思う。