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bpoベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演

指揮:サイモン・ラトル
ソプラノ:イヴォナ・ソボトカ、メゾ・ソプラノ:エヴァ・フォーゲル、
テノール:クリスティアン・エルスナー、バス:ドミートリ・イワシェンコ、
合唱:新国立劇場合唱団 (合唱指揮:三澤洋史)

 

2016年5月15日(日)15:00 サントリーホール

ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調「合唱付き」作品125

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4楽章でチェロとコントラバスが、有名なテーマを奏で始めた時に、いままでに全く聴いたことのない音楽が鳴っていることに気づいた。

特徴的にはこれ以上ない弱音、技術的には揃った音程、と書くとそれだけのようになってしまう。ただ、それ以上の得難い感覚があって、それは「いま音楽が生まれてくる」という体験を共有しているという不思議な気分だ。

クラシック音楽は過去に書かれた楽譜の再現で、馴染みのあるメロディであれば「ああ、始まったな」と思う。つまり、記憶の確認をしていることが多い。ところが、稀に「これからどうなるんだろう」と感じることがある。つまり、「新しい音楽」に立ち会っているという感覚だ。

この緊張感がだんだんと緩和されて、やがて大きなうねりが訪れていく。その頂点で、イワシェンコの朗々とした声が響いた頃から、段々と楽員の表情も緩んでくる。

卓越した技術を持つ奏者が、「いまが最高だ」という思いで弾いていることがヒシヒシと伝わってくる。ベルリン・フィルが「最高」と言われる由縁はここにあるのだろう。

音楽は、いまここで作られる。それはラトルがベルリンフィルが、聴衆を巻き込んで追求してきたことで、この日の演奏はそういう中での1つの頂点だったかもしれない。

いっぽうで、ベートーヴェンを演奏するのは難儀な時代になってきたと思う。フルトヴェングラーからカラヤンの頃までは、好き嫌いはあったとしても「こうやるんだ!」という確信があった。そしてアバドの頃から模索が始まり、それは今に至るまで続いている。

もっとも、それはベルリンフィルだけではなく、世界中の音楽家の課題なんだろう。

演奏全体を振り返ると、3楽章の後半くらいから音楽が一段とこなれて来て、フィナーレには聴いたことのないような熱量があった。ソリスト陣はもちろん、新国立劇場のコーラスも充実していた。

終演後にラトルが挨拶をした。「ありがとうございます」という日本語に続いて
”from my soul,from BerlinPhilharmoker,from my heart” そして”for your love,concentration,listening ……でその後聞き取りにくかったんだけど、~in the world と続く聴衆への感謝だった。
「外交辞令」と言う人もいるだろうが、僕はそうは感じなかった。Concentrationという言葉の選び方は、まさに「一緒に音楽をつくってくれた」人々への感謝だと思ったからである



東京フィルハーモニー交響楽団 『第九』特別演奏会

指揮:アンドレア・バッティストーニ

ソプラノ:安井 陽子・アルト:竹本 節子・テノール:アンドレアス・シャーガー・バリトン:萩原 潤

合唱:東京オペラシンガーズ

 

2015年12月18日(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール

ベートーヴェン/序曲『レオノーレ』第3番

ベートーヴェン/交響曲第9番 ニ短調『合唱付』作品125

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「第九」は3楽章までは屈指の名曲だと思うんだけど、4楽章の「やればできる」的なノリが決して好きではないので、指揮者に関心があるときだけ聞きに行く。最近だと2年前のインバルと都響以来だろうか。

というわけで、この日はバッティストーニの演奏を聴いてみたいというのが来た理由。この「ピエモンテ州の名物料理」みたいな名前の指揮者(そんな料理はないけど)が東フィルを振った演奏の評判をよく聞いたので、興味を持ったのだ。

この曲は、日本では年末にたくさん演奏されるのであまり意識されてないかもしれないが、あらゆる交響曲の中でも相当に演奏が難しい曲だと思ってる。いろんなところに落とし穴というか罠のようなものがある。

で、この日はどうしたかというと、東フィルは見事にそのトラップに嵌ったという感じだ。

レオノーレの冒頭から木管の音程が怪しくて嫌な予感がしたのだが、この傾向が終始変わらず。全体的にもアインザッツが合わない、というかそもそもアンサンブルが相当に荒れている。 >> 東フィルのことが心配になる一夜。バッティストーニの「第九」の続きを読む