2017年08月アーカイブ

【読んだ本】ジョシュア・ハマー著/梶山あゆみ(訳)『アルカイダから古文書を守った図書館員』紀伊国屋書店

私たちは、本当にイスラム文化のことを知らない。いや、そうやって勝手に「私たち」としてしまうのは、ちょっと強引かもしれない。でも、少なくても僕の知識なんかは相当適当だ。

そして、アフリカを舞台としたイスラム文化史のこととなると、過去はもちろん「いま何が起きているのか」もあまりに無知であることを痛感した。

ヨーロッパで印刷革命が起きた16世紀には、アフリカでは多くの書物が存在していた。それは、おもに個人の手で保管されてきたが、1980年代以降に徐々に収集されて、やがて図書館が建設される。

このノンフィクションの舞台は、西アフリカのマリ共和国のトンブクトゥという都市で、主人公はアブデル・ハデル・カイダラ。彼は研究者だった父の仕事を受け継ぎ、若い頃から国中を行脚して古文書を集めていく。まず、その苦労話から物語は始まる。

やがて収集が進み、米国の財団からの援助もあり図書館をつくる。文芸書から法学、あるいは天文学や医学にいたるまで実に幅広いカテゴリーの書物がアフリカにはあった。

それは長いこと埋もれ「ないもの」とされていたのである。

本書ではあるイギリスの歴史家が1963年にBBCのインタビューで語ったことが引かれている。

「あるのはアフリカにおけるヨーロッパ人の歴史のみ。それ以外は、闇が広がるばかりだ」

そんな“常識”を覆して、新たな文化の歴史を文字通り「発掘」していくのだが、やがてアルカイダの勢力がこの国にも広がっていく。 >> 寛容なイスラムを知るためにも『アルカイダから古文書を守った図書館員』【書評】の続きを読む



実は、7月末から長々と休んでいて、お盆の頃だけ東京で集中して仕事したんだけど、さすがにいつまでも休めずにキーボードを叩き始めた。まだ、指が回りきってくれない。

で、ずっとTシャツ短パンで過ごす日々が続いていたんだけど、一応それぞれに「起きている時」と「寝る時」を分けている。

単にくたびれたシャツやパンツが「寝る時」に回るのだけど、一応これには理由がある。

自宅で、「仕事をするフリーランスは、同じ服を着続けてはいけない」という、勝手なルールを決めているからだ。

これは、会社を辞めた頃に遡る。

その頃住んでいたマンションに、とある文芸評論家の方がいた。表札を見てそう気づいたのか、何かの機会に声をかけて行き来するようになった。彼は、既に長いこと物書きとして仕事をしている。

自宅には天井までの本が並び、あまり外出は好まないようで、ずっと家にいることも多いようだった。

会社員の頃からお付き合いはあったのだが、辞める時にこんなことを言われた。

「山本さんは、家にいる時も朝起きたら着替えるの?」

つまり、休日などは寝ている時の恰好のままで過ごすのか?ということだ。僕は、特に予定がない時でも必ず着替える。なんとなくジャージで過ごすようなことはなく、寝る時はパジャマにする。

僕が「着替えますよ」と答えたら、その彼が「じゃあ、大丈夫だ」と言った。

なんで、そんなことを聞くのか?と思ったのだが、理由を説明してくれた。 >> 「フリーランスはパジャマに着替えるべき」という教えについて。の続きを読む



「人づくり革命」が不評らしい。

日本人の中には「ものづくり」ということをありがたがる人は多いけど、だからこそ「人づくり」って何なのか。

しかも、そこに「革命」がつく。じゃあ、英語ではどうなるのか。やっぱりrevolutionとか言うのか。いや、それで大丈夫か。

といろいろ思って、首相官邸のウェブサイトを見た。英語版にして、Toshimitsu MOTEGIを探すとこう書いてある。
Minister for Human Resources Development

なんだ、これ。HRDか。「人的資源開発担当」って、まあ「人材開発担当」だ。なんか、コーポレート部門役員の管掌の話みたいじゃないか。

なんか、拍子抜けだ。じゃあ、なんで「ひとづくり革命」とかにしたのか。もう、それはセンスなんだろう。

ちなみに「一億総活躍」は、英語ではどうか?

Minister for Promoting Dynamic Engagement of All Citizens

おお、Dynamic Engagement!なんかすごいけど、立派過ぎて今度は日本語にしにくい。調べてみたら、記事にもなっていた。
『これを日本語に直訳すれば「全ての国民の精力的な参画の促進を担当する閣僚」になる。外国人には日本の人口規模が伝わりにくいため、英語表記では「一億人」を省いた。』

そりゃ、そうだろうな。この英語を決めるための会議とか、そのままコントになるんじゃないか。とりあえず、案の中にはhundred millionとか入っていて、それにactivityをくっつけようとすると、「それはちょっとなぁ」と上司が首を捻る。

やがてengagementとか探してくる人がいたんだろうか。ただengagementってどう捉えられるのか。それはそれで、気になる。

「地方創生」「一億総活躍」と来て。「人づくり革命」という“目玉政策”だが、筋としては正しいと思っている。人口減少の未来では、一人ひとりの「価値」が大切になっていく。

それは、わかる。

ただし、何とも伝わってこない。わかりやすくしようとしたのか、インパクトを重視したいのか。

ちなみに、英語表記のdevelopmentを日本語にするとどうなるか?career developmentなどは「キャリア開発」を連想することが多いと思うが、「キャリア発達」という訳語を当てる人もいる。

組織から見れば「開発」でも、人から見れば「発達」というわけだ。このあたり訳語一つとっても、「人材」というのはいろいろ興味深い世界なんだけど、相手は「人」だ。

で、developmentは、どう訳しても「革命」じゃないよな。



先月、「ブランド」についての、レクチャーを久しぶりに行う機会があった。まあ「ブランディングとコミュニケーションの仕組み」というような話だ。

あらためていろいろと調べてまとめてみると、インターネットの影響は当然でかいのだが、何がどう影響しているのか?ということについては散発的な議論になっているように思う。

そして、今回改めて思ったのは、「記憶」の話がちょっと難しくなってるな、ということだった。

ブランディングは、ブランドを「強く」することが目的だ。で、この「強さ」の正体は人々の「記憶」とされていた。ブランドに対する記憶を良好な状態にメインテナンスすることで、購買時に優位に立てますよ。

そういう理論の下で、「コミュニケーション戦略を考えましょう」という話になった。それは1998年頃だから、ウワっもう20年前か。そして、その頃の「コミュニケーション」の多くはマスメディアを使ったもので、形態としては殆どが広告だった。

というわけで、広告会社は続々とブランディングを唱え始める。まあぶっちゃけて言うと「そのためには広告ですよ」という“落としどころ”を狙ったわけだ。 >> 強いブランドに「良い記憶」は必須なのか?の続きを読む