「カネじゃない」はカネだ。
(2012年11月15日)

カテゴリ:キャリアのことも

「つまり、”カネじゃない”はカネ、なんだ」
これは、某弁護士が残した言葉として、企業法務の世界では伝わっているという。つまり、こういうことだ。
ある人が企業にクレームをつけて来たとする。違法ではないがトラブルになり、菓子折りを持って謝罪してもダメというような状況で、必ず「落としどころ」が問題になる。
そこで、クレームをつけた当人がこういう。
「こちらが言っているのは”カネじゃない”。おたくの誠意が見たいんだ」
ところが、件の弁護士によれば、この場合は結局「カネで解決」することが殆どだという。つまりというわけで、「”カネじゃない”はカネ」という金言が生まれたのだろう。
最近のおカネをめぐる話を見ていると、このエピソードを思い出す。
「人生、カネじゃない」
そんなことは言われなくてもわかっている。ただし、どれくらいカネにこだわるかは人それぞれだ。でも、若者がついに「カネ離れ」まで起こしているような話も出てくる。
「若者はおカネよりも人との結びつきを求める」みたいな記事も散見されるようになった。そういう話に「ソーシャル」の文字でも入れれば、何となく今どきの風潮を描いた記事にはなるんだろうか。


よく読めば、そこでは「どのくらいのカネがあればいいか」という話になっている。何のことはない。”カネじゃない”の話は、やっぱりカネなのである。
そもそも、絆とカネを比較するのが変だし。
「カネさえあれば何でも買える」
かつてそのようにうそぶいた人もいた。それはそうかもしれないが、何もそういう人をムキになって批判することもない。カネで買えないモノがあることくらい、ちょっと考えればわかるからだ。
しかし、そうした空気が濃くなって、就活を控えて「カネがほしい」という学生も少ないように思う。でも話してみればみんな気にしている。それを隠すようにしていても、すぐわかる。
バブル崩壊後に「清貧」が流行った時も思ったけど、無理やりカネとヒトを遠ざけるような話は、かえって不健全な気もする。
そういうことを説く人は、既に十分豊かだったりする。その上で若い人に、「カネじゃない」とか言うんだから、タチが悪い。就活が始まる前の季節は、学生たちが抱いてしまった妙な常識を解きほぐすことに結構手間がかかるのである。
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