表参道は「糖分・脂肪・塩分」でできている。【講義覚え書き】
(2015年7月16日)

カテゴリ:マーケティング

というわけで、今回の課題はタウン・ウォッチングに取り組んでもらったけど、いまもあったように表参道はいろいろと行列ができてます。

日本中、というか今や世界中から観光客が来ますから、どうしても珍しいものには並んでみる。物販もあるけど、やはり食べ物は多いですね。

パンケーキなどは相当前からあって、店舗も複数あるけど、ポップコーンやクロナッツ、そしてかき氷もあるよね。

で、こういう人気店には一定の法則があります。

それは、出している食べ物が「糖分・脂肪・塩分」の3つが絶妙に仕込まれているということです。どれも、人間にとって必要ですが摂りすぎはよくないとわかってる。でも、ついついひきつけられるわけです。

パンケーキだって、バターとはちみつで十分にこの3つが備わってますが、その上にアイスクリームやフルーツ乗せるでしょ。

ポップコーンは油と塩分に加えて、甘いテイストを加えるのが流行りだから、これも見事に3つ揃ってる。

クロナッツのように、クロワッサンとドーナツの組合せは、ある意味最強です。クロワッサンは普通のパンの中でも、バターを相当使ってるから脂肪分は高いし、塩分もしっかりあります。そこに甘い成分をドンと乗せてくるんだから、かなりパワフルだよ。

この3つの要素がいかに人々をとらえて来たか?ということを分析した本が、昨年日本でも翻訳出版されました。米国のジャーナリストが書いた本で「フードトラップ」という邦題なんだけど、原書はずばり”SALT,SUGAR,FAT”、つまり「塩・砂糖・脂肪」です。

この3要素を米国企業が、加工食品にどう取り入れて来たか、それがいかに消費者を魅了してきたか、ということが明らかにされてます。

こうした要素は意外なところにもあって、セブンイレブンの「金の食パン」は、砂糖、マーガリン、クリーム、はちみつが入ってます。もちろん、塩分も。実際食べたら甘みが強くて驚いたけど、そりゃそうだよね。僕は苦手ですが、ヒットした商品です。

やはりこの3要素が一体化すると強い。牛丼なんかもそうですね。

ただ、こういう甘いものを食べる人が増えているかというと、実際に1人当たりの年間砂糖消費量の統計ではそうではありません(グラフ:農畜産業振興機構の資料より/単位kg)。日本は世界各国で見ると低い方です。中国はさらに低いけど、これは伸びる余地があるかもしれないし、インドは意外と高いのですがアジアは相対的に低い。

一方で先進国は横ばいか減少ですが、米国が上がってフランスは下がってる。表参道の店も米国発が多い。また消費量がダントツに高いのはブラジルですが南米は総じて高く、欧州ではベルギー。

いずれにせよ、現象を見たら今のように構造化して、かつ砂糖消費量統計にあたる。すると表参道の流行りは「糖分・脂肪・塩分」でできているけど、日本人全体としては砂糖の摂取は上昇してないので、「たまには食べたい」からこそ行列してみるという心理が見えてきます。

表参道はいずれにせよ先端の動きがみられるし、そういう意味で青学の立地はマーケティングを学ぶには情報の宝庫だよね。

(2015年前期 青山学院大学の講義より)