初秋の風が吹いたら、ロッシーニの「弦楽のためのソナタ」を。
(2016年8月28日)

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【今日の音楽とディスク】 ロッシーニ「弦楽のためのソナタ」 イタリア合奏団
夏が終わろうとしている。というか、お盆明けから東日本は気候不順で、その後の台風ですっかり夏気分は終わった。

オリンピックが終わったことも象徴的だったけれど、あの辺りで今年の夏は店仕舞い。オリンピックは、閉幕前の男子4×100mリレーの爽快感があったけれど、終わると同時に爽やかさとは遠い事件がやたらと出てくる。

そして、さらに台風が来るらしい。

夏になってから、ディーリアスやラプソディ、メンデルスゾーンの無言歌などを紹介してきた。夏とクラシック音楽は、あまり相性が良くないと思っていたけど、探していくとそんなこともないかもしれない。

ベートーヴェンやワーグナーあたりが、ちょっと暑苦しいイメージなのだろう。

そして、ちょっと先取りして初秋にはどんな曲だろう。ブラームスやドヴォルザークは、もう少し秋が深まってからだと思うし、ちょっと夏の余韻がほしい。

というわけで、お薦めはロッシーニの「弦楽のためのソナタ」ということでいかがだろう。

ロッシーニは、オペラの作曲家として有名だし、「セビリアの理髪師」や「ウィリアム・テル」は序曲だけでもよく知られている。

そして、この「弦楽のためのソナタ」だけれど、少しの聞いてもらってから「誰の曲だと思う?」と訊ねてみると面白い。

「え、モーツアルト?」も感じる人は多いようだし、「もしかしたら、ハイドン?」という人もいる。

ロッシーニはモーツアルトを敬愛していて、相当研究していたというから、そう感じるものも頷ける。流れるようなメロディとメリハリの利いたリズム。スーッと変化する独特の陰翳など、たしかにモーツアルトを思い起こさせるところは多いし、ハイドンのようなしっかりした感じもある。

ロッシーニらしいなと思うのは、響きがふくよかでたっぷりとした歌が感じられるところだろうか。そして、時に劇的で、ヴィヴァルディ以来のイタリアらしい響きもある。

本を読みながらはもちろん、初秋の山道を走る時にも気持ちいいだろう。

イタリア合奏団のディスクは、過剰なところがないのに、とても豊かな気分になれるのがいい。

こうやって聞いてみると、ロッシーニは紛れもなく天才タイプの一人だったんなと感じる。彼は37歳で最後のオペラ「ウィリアム・テル」を書き、その後40代半ばで引退して、あとはステーキにトリュフやフォアグラを載せて優雅に暮らしたのはよく知られている。

そして、これは12歳の時の作品なのだ。天才は遥かな存在だからこそ、聴いていて独特の心地よさがあるのだろう。