81-ogoiYaDL._SL1500_料理の時は、夕方のニュースをザッピングするのもいいけれど、音楽を聴きながらというのも結構楽しい。そこで、僕が料理中に聞く音楽を少し書いておこうと思う。クラシック限定だけど。

ロッシーニ「序曲集」~どんな料理でもいいテンポで手際よく

そもそも料理をつくるときは、深刻な曲や表現過剰な演奏は向かない。そう考えると、そもそもクラシックの多くは向いてないのだ。モーツアルトはよさそうだが、ちょっときれい過ぎて、ガチャガチャとしてキッチンで聴くにはちょっと違う。もちろんテンポ感は欲しい。となると、ロッシーニの出番となる。ヴェルディとなると全然違うわけで、調理というのは、基本的には即物的なのである。

考えてみると、ロッシーニはレシピも残しているくらいの美食家だったわけで、彼の音楽を聴きながら料理をつくるのは、いいと思うんだよね。

ディスクではアバドをよく効くけど、ロンドン響との盤はちょっとガサガサとしたが手仕事の生地のような魅力があり、ヨーロッパ室内管との演奏はより滑らかな肌触りだ。

曲目に重複があるけど、僕は両方とも持っていて気分で聴いている。

ストラヴィンスキー「春の祭典」~タマネギを炒めるならこれでしょ!

タマネギを飴色になるまで炒めることがたまにある。その時にかけるのは、これしかないと思っている。春の祭典の音の変容は、タマネギがしんなりとして、気がつくと小さく色づいていくプロセスにぴったり合う。演奏時間が40分くらいなので、一曲聴く間にちょうぢいい感じになるのではなるのだ。単調なタマネギ炒めに、千変万化のハルサイはちょうどいい組合せなのだ。ディスクには名演数々あるけれど、ブーレーズの旧盤か、ラトルの新録音を聴くことが多い。 >> 【音の話】料理をつくるときに聞く音楽。の続きを読む



シカゴが来る。と言っても、シカゴのオーケストラだ。シカゴ響で、つまりCSOだ。クラシック音楽好きの中には思い入れのある人も多いだろう。

本だけではなくて、音楽についても今年は書いていこうかと思うわけで、正月3日目はそういうお話。

ベルリン、ウィーンと並んで「3大オケ」という惹句を考えた人もいた。「世界3大スープ」と同じで、これを言い出すのは大体3番目の関係者だ。別にシカゴ響が3番目かはともかく、欧州の名門オケと比して売り出そうとしたレコード会社の思惑もあっただろう。

というわけで、シカゴ響についての個人的な思い出を書いておきたい。

ショルティの演奏は1986年に上野で聴いた。ハフナーとマーラーの5番だったが、心底驚いた。トランペットのハーセスと、ホルンのクレヴェンジャー。終演後に立って挨拶する2人を見た時に、特に好きではないが「全盛期の王と長嶋」という連想をした。

あまりによかったので、翌週のバレンボイムのチケットをロビーで買った。残席があり、曲はワーグナーの「指環」からの抜粋などだった。

ところが、これが全く違うオーケストラだった。バレンボイムは金管を抑える。左手の掌を、管楽器に向けて弦楽器にうねうねとしたタクトを振る。シカゴ響という最高のエンジンにリミッターをかけていたような感じだ。

バレンボイムはベルリン国立歌劇場で「指環」を演奏した来日公演などが本当に良かったと思うが、どうもシンフォニーは辛気臭くなることがある。その後、2005年に「シルヴィ・ギエム 最後の“ボレロ”」という企画でCSOと来日したのだが、ボレロのトロンボーンがこけるは、「春の祭典」もグシャグシャで、まったく緊張感のない演奏だった。

この頃は、シカゴ響にとっても世代交代などで、過渡期だったんだろう。 >> 【音の話】柔らかな鋼、シカゴ交響楽団。の続きを読む



(2015年12月30日)

カテゴリ:見聞きした

こんなことをするのは初めてなのだけど、今年行った舞台を一通り書き出してみた。

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【1月】8日:鈴本演芸場夜の部・21日:スぺースゼロ新春寄席(雲助・喬太郎他)

・22日N響定期公演Bプロ

【2月】2日:桃月庵白酒独演会・24日:宝塚歌劇雪組公演「ルパン三世」他

【3月】7日:渋谷に福来たる(三三・白酒・一の輔)・9日:桃月庵白酒独演会・21日:仙台フィル定期公演・28日:ロサンゼルス・フィル東京公演「マーラー・交響曲第6番」

【4月】3日:バッハ・コレギウム・ジャパン演奏会「マタイ受難曲」

【5月】4日・春風亭昇太独演会・19日:桃月庵白酒独演会

【6月】3日・末廣亭昼の部・25日:東宝ミュージカル「エリザベート」・29日:シティボーイズ公演

【7月】12日:新日本フィル定期公演「マーラー“復活」”・22日:桃月庵白酒独演会・23日:立川談春独演会・26日:宝塚歌劇月組公演「1789」・26日:春風亭昇太独演会

【8月】6日:アンドレ・アンリ&加納尚樹デュオ演奏会・15日:相模原薪能・21日:鈴本演芸場昼の部

【9月】15日:宝塚歌劇雪組公演「星逢一夜」・16日:国立能楽堂定例公演・23日:アンサンブル・ジュピター定期公演・29日:桃月庵白酒独演会

【10月】4日:観世会定期能・13日:春風亭昇太独演会・14日:ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場オペラ「魔笛」・24日:劇団四季「オペラ座の怪人」・31日:国立能楽堂企画公演

【11月】8日:宝生会月並公演・21日:バッハ・コレギウム・ジャパン演奏会「モーツアルト・ミサ曲ハ短調」・23日・永島充の会
【12月】2日:国立能楽堂定例公演・4日:読売日響定期公演「シベリウス交響曲5・6・7番」・9日:桃月庵白酒独演会・11日:国立劇場歌舞伎公演「東海道四谷怪談」・12日:国立能楽堂普及公演・13日:金春円満井会特別公演「道成寺」・18日東京フィル特別公演「第九」・20日喜多流自主公演・30日:桃月庵白酒独演会(予定)

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どれがベストとか、ましてワーストがなどと言い出すと野暮になるのでやめておくが、勘定すると45回だった。毎週というわけではないが、11月以降はよく行ったなあという感じだった。 >> 2015年、今年行った舞台。の続きを読む



kita何度か書いているけれど、今秋から能を見始めている。夏に見た寒川神社の薪能がきっかけで、いろいろと通うようになり、今日は、初めて目黒の喜多能楽堂に行った。

まだ評するほどではないが、感じたことを覚え書きにしておきたい。

■ やっぱり客層は高齢者中心

これは予想通りだったが、相当に年齢は高い。昼間の寄席などは団塊世代が支えている感じだが、さらにその上という感じである。ただし国立能楽堂の主催公演だと若い人も女性を中心に結構いる。これは、チケット価格も関係しているかもしれない。

■ チケットは結構高い

最初に国立能楽堂に行ったときは、一番高い正面席が4,900円で、一番安いのは2,700円だったので「そんなものか」と思ったんだけど、そんなものではない。観世会だと12,500円から7,000円。定期公演や企画公演などで違いもあるがよその流派でも、一番高い席は10,000円くらいするし、安くても5,000円くらい。

出演者は少ないが能楽堂は座席数が少ないし、仮に増やしてもそうそう埋まるわけではないだろう。衣装などの維持を考えるとこうした価格になるのだろうが、これは若い人に広めていく上で結構ネックかもしれない。歌舞伎座1等席の18,000円はともかく、宝塚とN響のS席が8,800円という辺りと比較しても、高い印象がある。とりあえず安いチケットを買っていて、それでも十分楽しめるけどね。

ちなみに国立能楽堂の主催公演はまず満席になるので、やはりチケット価格がひっかかってるのだろう。 >> 「能」について、いろいろ感じたこと。の続きを読む



東京フィルハーモニー交響楽団 『第九』特別演奏会

指揮:アンドレア・バッティストーニ

ソプラノ:安井 陽子・アルト:竹本 節子・テノール:アンドレアス・シャーガー・バリトン:萩原 潤

合唱:東京オペラシンガーズ

 

2015年12月18日(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール

ベートーヴェン/序曲『レオノーレ』第3番

ベートーヴェン/交響曲第9番 ニ短調『合唱付』作品125

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「第九」は3楽章までは屈指の名曲だと思うんだけど、4楽章の「やればできる」的なノリが決して好きではないので、指揮者に関心があるときだけ聞きに行く。最近だと2年前のインバルと都響以来だろうか。

というわけで、この日はバッティストーニの演奏を聴いてみたいというのが来た理由。この「ピエモンテ州の名物料理」みたいな名前の指揮者(そんな料理はないけど)が東フィルを振った演奏の評判をよく聞いたので、興味を持ったのだ。

この曲は、日本では年末にたくさん演奏されるのであまり意識されてないかもしれないが、あらゆる交響曲の中でも相当に演奏が難しい曲だと思ってる。いろんなところに落とし穴というか罠のようなものがある。

で、この日はどうしたかというと、東フィルは見事にそのトラップに嵌ったという感じだ。

レオノーレの冒頭から木管の音程が怪しくて嫌な予感がしたのだが、この傾向が終始変わらず。全体的にもアインザッツが合わない、というかそもそもアンサンブルが相当に荒れている。 >> 東フィルのことが心配になる一夜。バッティストーニの「第九」の続きを読む