2011年7月に起きること。
(2010年10月8日)

カテゴリ:マーケティング
タグ: ,

来年の7月に予定通りに地デジに移行すると、テレビメディアの価値はどうなるのか?ということについては「現状より上がる」という人が多い。僕も基本的にはそう思っている。
大画面のテレビが普及して高画質のコンテンツに接して「なかなかだな」と実感する人が増えているからだろう。
そんなおり、電通の澤本嘉光氏のインタビューを読んだ。地デジ化がテレビCMの「追い風」になるという主旨のお話。このページのあたりを読むと論旨はわかるだろう。
さて、この澤本氏の主張は「なるほど」という面もあるのだけれど、1つの仮説である。それ以外にどのような仮説が立てられるか?というのはコンサルタントの「仮説構築力」のテストになるかもしれない。
まず、澤本氏の論旨を仮説Aとしよう。

仮説A. テレビが大きくなると家の中心にテレビを置く。すると、そのテレビがいいものだから、家の中心に家族が集まるっていう状況になる。また各個人の部屋にあったテレビは全部見れなくなって、ただの「ハコ」になる。だからテレビ見たいんだったらもう1台買うか、家の真ん中のでっかいのを見ることになる。視聴率が上がるかどうかは別として、単純に人と一緒にテレビを見ている時間が延びる。そしてチャンネル争いも起きる。
チャンネル争い、というのは結果的にテレビへの関与度を向上させる、というわけだ。
さて、2011年の7月に起きることは他にどのような可能性があるだろうか。
以下、別の仮説。

仮説B. 個人の部屋のテレビが見られなくなったら、別に茶の間には行かない。パソコンか携帯でテレビを見る。もしくは、テレビ自体を見なくなる。
仮説C. テレビモニターの前にいる時間は長くなっても、DVDなど他のメディアを見たり、録画された番組を見る。この場合CMはスキップされる可能性が高い。

仮説Bは主に若年層の視聴形態を念頭におくと、十分な可能性がある。仮説Cは中高年以上の視聴形態でありえることだろう。いま「大画面・高画質」にふさわしいコンテンツは少ない。あるとすれば、地上波よりもBSになっている。
1つ言えるのは、A,B,Cあるいはそれ以外の変化が起きたときに、現在の世帯視聴率ベースの取引では広告主は満足しないということだ。テレビCMの費用対効果への疑問は年々上がっている一方で、BSなどの価値が不明確なまま。
ちなみに、地デジによって「見られないテレビ」がどのくらいあるのか、というのもいろんな切り口で考えられる。昨年から今年前半のデータを見ると、台数以上に普及率が鈍かった。つまり、早期に買い換えた家庭ではさらに買い増しをしていたことになる。これは、主に中高年以上だ。「世帯内でそれぞれの部屋でテレビを見ると」いうニーズは親子別々ではなく「夫婦別々」の方が多いと思う。
しかし、家庭外のテレビモニターはどうなるのだろうか。スポーツクラブのランニングマシン(トレッドミル)の画面と一体化しているテレビモニターとか。クライアントの会議室にある、ブラウン管テレビとか。ホテルや旅館でもリゾート系なら「これを機会にテレビなし」というのもありかもしれない。

で、結局地デジで何がどうなるって、仮説は立つけどその先はどうなるのか。誰も言い切れないんだろうな。