優秀な営業が壁に当たる時の共通点とは。
(2016年2月18日)

カテゴリ:キャリアのことも
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いや、別に営業に限らず、どんな職種でも壁にぶち当たることはある。しかし、いろいろと観察してきた経験を総合すると、若くして優秀と言われた営業職ほど似たような壁に当たる。そして、そこを乗り越える際にも共通した動きがあると思う。

そもそも営業職は数字という結果を求められて、それに応えていくというサイクルで動いていく。このサイクルはプラスに回り始めると好循環を生む。自信がつけば信頼を得られる。それが、「優秀な営業」の無形のスキルになる。

「ここでカネを払わないと結局損をするかも」

相手がそう思うようになったら、相当なものだ。飲食店で「お薦め」を売るのも、億単位の取引を獲得するのも、そういう意味においては共通した心理があるのだ。

こういうサイクルにおいては、どんどん仕事が増えて、それをこなすことになる。会社としては、頼りになる営業が相当の収益を上げてくる。2割の人が8割の仕事をする、というような話もあるくらいだから忙しさは加速する。

こうなると、いわば壁打ちテニスのようになる。壁打ちテニスなら、マイペースでできるが、壁がどんどん接近してくるようなものだ。それを打ち返し続ければ、相当に鍛えられる。昔のビデオゲームの「テトリス」のような落ちゲーの達人みたいなものだ。

しかし、どこかで転機が来る。マネジメントの仕事になったり、企画職に異動したり、あるいは前例のないリセッションで市場が縮小したような時、彼らは想像以上に立ちすくむ。

テニスでいえば、サーブ権を得た途端にどうしていいかわからなくなる。ボールが来ないと、動けないという感じだ。

世間では、これを「戦略的思考の欠如」という。ただ、もっとわかりやすく言えば、「猫と同じ行動形態」になっていて、人としての思考を忘れてるということじゃないか。

ここで、昨日書いた「猫は後悔するか問題について」という話に戻る。猫は後悔しない、人は後悔する。「事実と異なることを想像する」力があるからこそ、後悔する。逆に言えば、未来に向かって仮説をつくる。そういう話だ。

優秀な営業は後悔も少ない。忙しいから現実をこなして、それがまた上手だ。ただし、それは猫がネズミを獲るように、眼前の動きに最高の運動神経で対応しているのとまったく同じだ。人間としても持っている能力を使わないまま、長い時間を過ごしてしまう。

このような条件反射行動に追われる、という仕事が多い営業職だから、独特の壁があるのだろう。営業でも最初から壁に当たっている人の方が、自分で考える。自然と戦略的になることさえある。

組織としては、営業として絶好調の時に異動させて経験の幅を広げさせることが一番いい。もちろん、そんなことはわかっているという人も多いだろうが現実には壁もある。何せ、現場が手放さなさい。そして、手放さない元凶は「自分で考えることができなくなった」管理職で、役員までもそうだったりするからややこしい。
もっとも上の方が、日常的に「現実と異なる可能性」を考えて話していないから壁に当たるのだろうが。

優秀な猫が100頭集まれば、100匹のネズミを獲るかもしれない。ただし、そこに集団としての進化はない。ところが、それを笑ってばかりもいられないのである。