したたかなブロンフマンとウィーン・フィル。
(2019年11月9日)

カテゴリ:見聞きした

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演

2019年 11月6日 (水) 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 作品30/ショパン:ノクターン作品27-2(ピアノ・アンコール)/ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」/ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル 憂いもなく 作品271

指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ/ピアノ:イェフィム・ブロンフマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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何と言えばいいのか、とても音楽は堪能したんだけど、いざ評を書こうとするとなんだかすごく難しい。改めてウィーンフィルの響きは分厚く、なめらかで、華があり、ここぞという時の瞬発力は素晴らしい。などと書いても、それは誰にだってわかることだと思う。

指揮者は41歳なので、この業界では「若手」ということになる。指揮ぶりがよく見える席だったけれど、ストラヴィンスキーなどはかなり細かく丁寧に振っていたが、オーケストラとしては「わかってございます」という風情で、グングン進んでいく。

超高性能のスーパーカーを操っているつもりが、実は自動運転モードになっていました、という感じだろうか。

一方でラフマニノフについては、ブロンフマンがきっちりと曲を進めていく。つまり、今度は先導車がいて、そのアクセルやブレーキにピッタリ合わせていく感じになる。

ラフマニノフもストラヴィンスキーも、冒頭からどちらかというと淡々と進んでいくのだけれど、終曲のコーダからの爆発力が素晴らしくて、一気に聴衆をグイっとつかんで、「さらっていく」という感じだろうか。

その振り付けも、ピアニストとオーケストラがしっかり考えて演じていたように思う。

もっとも、この日の白眉がそれぞれのアンコールだったことも象徴的だろう。ショパンは、本当に滋味あふれる音色と節回しで、「このまま、何曲弾いてもいいんだから」という気分になったし、ポルカの響きはウィーンフィル以外の何物でもない躍動感。。

変拍子もこなすけど、やっぱりポルカ。さっきまで、生贄の音楽やっていたのに「憂いもなく」って。でも本当に素晴らしくて、これもまた、「もっとやっていいよ」と言いたくなる。

というわけで、ブロンフマンとウィーンフィルのしたたかさを、しっかりと感じさせる一夜だった。

頑張れ、アンドレス。